著者
篠塚 真充 小林 久文 小山 晴樹 竹内 大樹 植谷 岳郎
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.O-076, 2020 (Released:2020-01-01)

【背景】夜間痛を呈する肩関節疾患の治療において夜間痛を把握し,介入の負荷量を調整することが重要となる.しかし,臨床における夜間痛の主観的な把握では治療方針の決定に苦慮することがある.近年,夜間痛を客観的に評価する指標として,前上腕回旋動脈(AHCA)収縮期血流速度(PSV)に着目されている.【目的】夜間痛を呈する腱板断裂例に対し,AHCA血流速度に着目し,夜間痛の増減に合わせて負荷量を調整することで良好な治療成績を得たため報告する.本報告はヘルシンキ宣言に基づき本人に説明と同意を得た.【対象・方法】66歳女性.AHCAのPSVは夜間痛出現時と減少時(出現時から17日後),再燃時(27日後),再減少時(41日後)の4期で超音波診断装置(US)のpulse doppler modeを用いて測定した.夜間痛の分類には,林らの分類を用い,疼痛,機能評価にはVisual Analog Scale(VAS)・DASHscoreを用いた.理学療法は夜間痛出現時に就寝時ポジショニング指導・icing指導を行い,減少時に肩関節周囲筋のリラクゼーションを実施し,再燃後,再度icingを指導した.【結果】夜間痛出現時は林らの分類でType3,VAS 1.5,PSV 28.4cm/s,DASHscore 20.5/100,減少時は林らの分類Type2,VAS 0.5,PSV 15.9cm/s,再燃時は林らの分類Type4,VAS 9.5,PSV 22.3cm/s,DASHscore 14.1/100,再減少時は林らの分類でType1,VAS 0,PSV 12.2cm/s,DASHscore 13.3/100であった.【考察】多田らは腱板断裂症例に対する夜間痛有無のAHCA PSVのCut off値は20.5cm/sと報告している.今回,USを用いることで夜間痛を客観的かつ経時的に観察し治療介入を選択した.その結果,夜間痛が減少したため適切な治療が選択できたと考えた.