著者
椙本 歩美
出版者
公立大学法人 国際教養大学 アジア地域研究連携機構
雑誌
国際教養大学 アジア地域研究連携機構研究紀要 (ISSN:21895554)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.69-81, 2016-03-31 (Released:2018-04-27)

戦後70年を過ぎ、戦争体験の継承がますます困難になっている。そこで大学と地域が連携して戦争体験を継承するためのワークショップ「雄和で学ぶ暮らしのなかの戦争」を開催し、ライフストーリーをとおして地域の戦争体験を記録するとともに、住民や学生が意見交換を行った。本稿では、ワークショップで紹介された語り手の戦争体験を記録し、参加者にとってどのような学びや気づきにつながったのかを考察する。語り手にとって戦争は、語り難い記憶でもある。個人の戦争体験を継承する取り組みでは、語られたことに焦点が当てられがちだが、聞き手は語り難さからも、言葉にできないほどの記憶や思いを抱えている語り手の存在に気付くことができる。個人の戦争体験としてワークショップで語られたことと、語られなかったことを示したうえで、聞き手が前者だけでなく後者からも戦争の悲惨さを学んだことを明らかにしたい。
著者
椙本 歩美
出版者
公立大学法人 国際教養大学 アジア地域研究連携機構
雑誌
国際教養大学 アジア地域研究連携機構研究紀要 (ISSN:21895554)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.73-89, 2018 (Released:2018-10-29)

戦後73 年が経過し、戦争の記憶の継承が課題となっている。しかし戦争体験は、当事者にとって語り難いものであり、それゆえに語り手となることもまた難しい。秋田市には県内で唯一、戦争体験の語り部の会がある。本稿では、この語り部の会を設立した人物に焦点を当てる。小中学生時代を戦中・戦後に生きた設立者が語る戦争は、生活体験としての記憶であり、その中で学校教育や社会の矛盾について、子ども心に抱いた多くの疑問を語り手に訴えるものであった。この個人の経験が、その後の秋田市語り部の会の設立にも影響していると考えられる。設立者は戦争体験について、何を、誰に、なぜ語るのだろうか。秋田市語り部の会の設立者のオーラル・ヒストリーを通して、会の特徴や目的について理解を深めたい。