著者
椿 由紀子
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.147, pp.97-111, 2010 (Released:2017-02-15)
参考文献数
27

コミュニケーション・ストラテジーとしての「聞き返し」の教育を中級の会話クラスで実践した。この「聞き返し」教育では,(1)『「聞き返し」をマスターしよう』という作成教材の学習,(2)母語話者との実際場面での会話の事前指導および事後のフォローアップインタビューでの指導,(3)メタ認知トレーニングシートの記入を行った。本実践の教育効果を「聞き返し」教育前と後の母語話者との会話で検証した。2回の会話での学習者の「聞き返し」使用意識と使用回数の変化を検討したところ,半数の学習者は,教育前には使えていなかった「聞き返し」が教育後の会話では意識的に使えていることが明らかになった。教育後の会話では,質的により望ましい「聞き返し」が使えており会話交換が活発になったこともわかった。しかし,この実践では,教材および教材の学習方法,会話直前の指導法,フォローアップインタビューでの指導法に改善の余地があることも明らかになった。