著者
榊 陽 小倉 未基
出版者
千葉大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1994

1.ヒメマスの磁場中における行動実験:磁場見地機能確認のためにベニザケの陸封種であるヒメマス成魚を水槽に入れ、電撃印加の前触れとして磁場を加えてその反応を調べた。また対照実験として磁界の代わりに光を用いた。その結果光の前触れには学習効果があったが、磁場に反応するためにはかなりの時間が必要らしいことがわかった。これらの実験結果から、ヒメマスの感覚としては視覚が優先し、磁気感覚は優先順位としてはかなり低位にあるものと判定される。2.外洋におけるシロザケに磁場外乱を与えた場合の行動追跡実験:日本に回帰中のシロザケの成魚を釧路沖で捕らえ、外乱磁場発生用コイル、コイル電流制御装置および追跡用超音波発信器を取り付けて放流しその行動を調査した。追跡中に外乱磁場が発生したにも拘らず、サケの行動にはそれ以前と顕著に異なる変化は見いだせなかった。従ってサケはこの海域では方位の決定に磁気を最優先的に用いているわけではないと推定される。なおサケが遊泳方向を変える場合には、一旦速度を落としていること、母川方向からはずれても海流に沿って行動している、などの新しい知見を得ることができた。行動追跡実験で得られた新しい知見は、今後サケの回遊を考える上で何らかの手がかりを与えるものであろう。2.サケ頭部からの磁性物質の抽出:磁性微粒子と磁気感覚器官との関係を知るため、組織と磁性物質がついたままの状態での試料の抽出を試みた。この結果期待したような試料を得ることができたが、磁性物質の分析や組織の正確な部位の特定は未完の状態にあり、今後の更なる研究が必要である。