著者
木村 美恵子 横井 克彦 糸川 嘉則 増田 徹 平池 秀和
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1992 (Released:1993-04-01)

近年、免疫能の低下が問題である癌や感染症も栄養状態が大きく関与している可能性が指摘されるようになってきた。他方、必須微量栄養素の1つであるマグネシウムを欠乏させた動物では、著明な脾臓や胸線の肥大、リンパ球こ増加、カテコールアミンやセロトニンの代謝異常が認められることを明らかにしてきた。これまでのこれらの研究成果に注目し、今回は、マグネシウム栄養と免疫能の関連を明かにするため、免疫応答能に及ぼすマグネシウム欠乏の影響について検討した。マグネシウム欠乏飼料で1または2週間飼育したラット及び正常飼料で飼育した対照群ラットの脾細胞および腹くうマクロファージ(MΦ)を無菌的に採取し、脾細胞はマイトジェン(ConA,LPS)刺激による幼若化反応及びサイトカイン(IL-2,IL-3)活性、腹くうMΦはIL-1,IL-6活性を測定した。また、脾細胞からT細胞を分離して、MΦと混合培養して、それぞれの機能をさらに詳細に検討した。マグネシウム欠乏飼料で飼育したラットの脾細胞のConAにたいする幼若化能は正常飼料摂取群に比較して、著しく低下していた。LPSにたいする反応性はConAのような大きな変化は認められなかった。脾細胞のサイトカイン産生能は、ConA反応性の低下が認められたに関わらず、マグネシウム欠乏群のIL-2値がやや高値であった。MΦのサイトカイン産生能はIL-2,IL-6ともにマグネシウム欠乏群で高値の傾向があった。脾T細胞とMΦの相互作用では、T細胞自体はマグネシウム欠乏と対照群の間で差が認められなかったが、マグネシウム欠乏群のMΦはConAにたいする反応性を補助する能力が低下していた。以上、マグネシウム欠乏による免疫応答能低下の影響が確認された。
著者
森 勝義 高橋 計介 尾定 誠 松谷 武成
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1992 (Released:1992-04-01)

1.マガキ液性因子の同定マガキの生体防御機構に関わると推測される液性因子を生化学的に特定した。まず、血リンパから210kDaのサブユニットからなるホモ二量体の420kDaのフィブロネクチンの精製に成功した。また、血リンパに少なくとも3種類存在すると考えられたレクチンのうち、約630kDa(22kDaと23kDaのサブユニットからなるヘテロポリマー)のEレクチンと約660kDa(21.5kDaと22.5kDaのサブユニットからなるヘテロポリマー)のHレクチンを精製した。さらに、殺菌因子として消化盲襄から17kDaのリゾチーム分子を精製し、食細胞による食菌後の殺菌に強く関与するミエロペルオキシダーゼがマガキ血球で初めて同定された。2.各因子の特性と細胞性因子との関係マガキフィブロネクチンはヒト、ニジマスフィブロネクチンとは血清学的に交差性はなかったものの、共通の細胞認識領域を持つことから、創傷部への細胞の誘導接着への積極的関与が推察された。Eレクチン、Hレクチンを含むそれぞれの活性画分に細菌に対する強い凝集作用が認められると同時に、凝集活性の見られない他の多くの細菌への結合も確認され、レクチンの幅広い異物認識機能が明らかになった。しかし、細菌への結合とそれに続く食作用のこう亢進との関連で期待された、オプソニン効果は見られなかった。精製された消化盲襄由来のリゾチームは、その特性からこれまで報告してきたリゾチーム活性を示した分子であり、外套膜由来リゾチームも同一成分であると考えられた。一方、至適pHが異なり、従来のリゾチームが示したのとは異なる細菌に対しても細菌活性を示す成分が消化盲襄に局在し、リゾチームとの関係に興味がもたれた。リゾチーム活性は血球には認められていないが、食菌後の殺菌を担う次亜塩素酸合成を仲介するミエロペルオキシダーゼの存在が証明され、細胞性の殺菌機構の一端が明らかとなった。
著者
藤井 博信 梅尾 和則 鈴木 孝至 桜井 醇児 藤田 敏三 高畠 敏郎 溶野 稔一
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991 (Released:1991-04-01)

セリウム(Ce)やウラン(U)を含む一連の金属間化合物において、f-電子は配位子のs,p,d-電子との混成効果によって強い電子相関を保ちながら結晶中を偏歴し、低温で重い電子状態を形成する。それと同時に近藤格子型相互作用によって極めて異常な基底状態が出現する。本研究では、基底状態で示す種々の特異な物性が異方的混成効果に起源する現象であると考え、純良単結晶を育成し、それを用いた系統的な物性研究を計画した。まずトリ・アーク溶解炉、赤外線集中加熱炉、高周波溶解炉を整備しチョコラルスキー法による単結晶の育成法の確立に着手した。良質なCeNiSn,CeNi_2Sn_2CePt _2Sn_2,Upd_2などを含め7種類の単結晶の育成に成攻した。これら結晶を用いて、電気抵抗、帯磁率、熱電能、ホール係数、比熱および超音波による弾性定数などの異方性の測定を行った。主な成果を要約すると、(1)CeNiSnは斜方晶(ε-TiNiSi型)のa軸に沿って磁場(H>13T)を印加すると、V字型のギャップが潰れ半導体から金属へ転移し重い電子状態が複活する又圧力(P≧20kbar)を作用することによってギャップが異方的に潰れる、一方同じ結晶構造を示すCePtSnは0.3Kまで金属として振舞う。(2)CePdInとUPdInは同じ結晶構造(ZrNiAl-型六方晶)をとるが、それらが示す物性は極めて対照的な振まい(Pa>Pc:波数ベクトルQ=(0.25,0,0)forCe系とPa<PcQ=(0,0,0.40)forU系)を示し、異方的混成効果がCePdInでは結晶場効果と逆方向へ作用(帯磁率へ対して)し、UPdInでは結晶場効果と増強する方向へ作用する、(3)CeNi_2Sn_2Cept D22 D2 SnD22D2は異常に重い電子状態(γ〜5J/mole)を形成し、極めて異方的な物性を示す。その解析より、結晶場励起エネルギーが低く、近藤効果とRKKY相互作用が競合した新しいタイプの重い電子状態であることなどが明らかにされた。今後は、更に純良な単結晶育成法を確立し、詳細で多面的な研究を行う予定である。
著者
遠藤 康男 只野 武 中村 雅典 田端 孝義 渡辺 誠
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1994 (Released:1994-04-01)

遠藤らの研究成果に基づく仮説“筋肉疲労が筋肉組織からサイトカインのinterleukin(IL-1)を遊離させ,この因子が筋肉組織にヒスタミン合成酵素のHDCを誘導し、持続的なヒスタミンの産生をもたらし,顎関節症などにおける筋肉痛を引き起こすのではないか?"を検討し,以下の結果を得た.(1)マウスの大腿四頭筋と咬筋を電気刺激すると,刺激の強さに比例してHDC活性が増加する.(2)強制歩行(筋肉運動)により、大腿四頭筋のHDC活性は歩行時間に比例して増加する.(3)筋肉でのHDC誘導に肥満細胞(ヒスタミン貯蔵細胞)は関与しない.(4)抗ヒスタミン剤のクロルフェニラミン(CP,ヒスタミンH1受容体の遮断薬)と,これまで臨床的に使用されてきた消炎鎮痛薬(プロスタグランジン合成阻害薬)のフルルビプロフェン(FB)について,顎関節症患者への臨床効果を比較した.CPでは,肩こりや頭痛などの併発症状の改善も含め,約80%の患者に対し改善効果が認められ,一方,FBでは改善効果は約40%であり,副作用の胃障害のため,投与中止のケースも生じた.CPでは,副作用はよく知られている眠気だけであった.(5)IL-1をマウスに注射すると,種々の組織でヒスタミン合成酵素のHDCが誘導されるが,大腿四頭筋および咬筋においてもHDCが誘導される.IL-1による筋肉でのHDC誘導は,電気刺激や運動の場合よりも速やかに起こり,IL-1は1μg/kgの微量の用量でHDCを誘導する.(6)マクロファージや血管内皮細胞は免疫学的刺激により,IL-1を産生することが知られる.筆者らは筋肉疲労もIL-1の産生をもたらすのではないかと予測し,IL-1の抗体とmicro ELIZA systemを用いて,血清中のIL-1の測定を試みたが,検出出来なかった.そこで,筋肉組織について,組織化学的にIL-1の検出を試みた.その結果,筋肉組織にはIL-1のβ型が存在し,毛細血管にも分布するが大部分は筋肉細胞のミトコンドリアに分布し,非運動時にも存在することを発見した.IL-1βは不活性な前駆体として合成され,酵素のプロセシングにより活性型に交換され細胞外に遊離されると言われる.従って,この発見は上記の仮説を補強する。しかし,非運動時の筋肉ミトコンドリアでの存在は予想外の発見である.(7)従来より疲労物質と考えられてきた乳酸が筋肉のHDC活性を調節する可能性は少ないものと思われる.(8)運動による筋肉でのHDC誘導の程度は,性差や年齢差,トレーニングの有無,マウス系統の違いなどで異なる.高齢マウスでは高いHDCの活性が誘導され,また,トレーニングはHDC活性の誘導を抑制する.以上の結果より筋肉疲労について次のメカニズムが想定されるに至った,IL-1β前駆体(血管内皮細胞および筋肉ミトコンドリアに分布)→運動に伴うミトコンドリア活性化/プロセシング酵素の活性化→活性型IL-1βの遊離→IL-1βによる血管内皮細胞の刺激→血管内皮細胞におけるHDCの誘導→ヒスタミン産生と放出→細胞脈の拡張,血管透過性亢進,筋肉痛(警告反応)→血液・筋肉細胞間の物質交換亢進/休息→疲労回復.また,本研究において,抗ヒスタミン剤は顎関節症の治療に有効な手段となることが示唆され,さらに,筋肉ミトコンドリアでのIL-1βの発見は,IL-1βによる筋肉細胞の調節という新たな研究の展開をもたらした.
著者
村山 忍三 那須 民江 青山 俊文
出版者
信州大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991 (Released:1991-04-01)

1.遺伝子工学的に合成されたヒトP450による有機溶剤の代謝を検討した。これらのP450のトルエン,エチルベンゼン,スチレンの代謝への寄与は類似しており,最も代謝活性が高いのはCYP2B6で,CYP2F1,CYP2E1,CYP1A2,CYP2C8,CYD4B1がこれに次いでいた。CYP3A3,CYP3A4,CYP3A5も活性を示したが,その程度は僅かであった。CYP2A6,CYP2C9,CYP2D6の有機溶剤の代謝活性は殆ど認められなかった。一方ベンゼンとフェノールの代謝活性が最も高いのはCYD2E1であった。CYP1A2,CYP2B6,CYP2C8,CYP2F1のこれらの代謝への寄与は非常に低かった。しかしCYP1A2/1は骨髄で発現されているが、CYP2E1は発現していないので、ベンゼンの骨髄毒性という観点からはCYP1A2の方が重要である。2.トルエンの代謝をモデルとして、CYP2B1-次構造とトルエンの代謝物生成との関連性を検討した。58番目のLenをPheに置換するとベンジルアルコール(BA)の生成は60%以上保持されるが、O-とP-クレゾールの生成は消失していた。114番目のlleをPheに置換するとすべての代謝物が50%以下に低下したが、トルエン環の水酸化は確実に保持されていた。282番目の置換(Glu→Val)はトルエンの代謝に大きな影響を与えなかった。CYP2B1によるトルエン環の水酸化には58番目のLeuが重要な役割を果しているといえよう。3.ヒトの肝のみならず肺ミクロソームにおいて多くの有機溶剤が代謝された。しかし肺における代謝速度は肝の数パーセントであった。喫煙は肝においてトルエンからO-クレゾールの生成を促進させ、肺におけるスチレンの代謝を亢進させた。飲酒の有機溶剤の代謝に与える影響は認められなかった。ヒトの肺におけるトルエンの代謝のパターンは肝におけるパターンと異っていた。すなわち、肝ではO-とP-クレゾールの生成比率は10%以下であったが、肺においてはそれぞれ20%と30%であった。
著者
大田 陸夫 福永 二郎
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1990 (Released:1990-04-01)

溶融法によるガラスの作製においては高融点系では溶融温度に実験上の制限がある一方,結晶化しやすい系や組成ではガラスを得ることが出来ない,ゾルゲル法においてはゾル溶液からゲルを経て,ガラスを作製するので溶融法における高融点のため実験不能という事態は避けられる。しかしながらゲルの生成能はガラスの生成能と深く関連しており,ゲルからガラスを作製する上でもゲルの熱的安定性が問題になる,本研究では基本的な系として,B_2O_3ーNa_2O,B_2O_3ーNa_2OーAl_2O_3およびSiO_2ーNa_2O系をモデルとしてとり上げ,ゾルゲル法によるゲルの熱的安定性を調べ,ガラス化領域とゾルゲル法によってどの程度広げられるかという問題に答えるための研究を行った。まず上記の系のゲル化領域とゲルの熱的安定性を調べた。ゲル化領域に対する水分,塩酸,アンモニアの添加の影響と検討した。ゲル化領域はB_2O_3ーNa_2O系ではB_2O_3=100および<60モル%以外の組成域であった。B_2O_3ーNa_2OーAl_2O_3系ではB_2O_3ーNa_2O系で結晶化した領域がゲル化するところも現れた。SiO_2ーNa_2O系ではゲル化領域はSiO_2=60ー100モル%組域であった。ゲル化領域は水の添加によって殆ど変化せず,塩酸の添加によってはゲル化領域はSiO_2=100%組成似外は存在しなかった。ゲル化特間は水分またはアンモニアの添加とともに短縮した,ゲルを昇温速度5℃/分でDTA測定を行い,発熱ピ-クから結晶開始温度Tcを決定した。T_LはDTAおよび加熱マテ-ジ付き顕微鏡によって直接観察して求めた。溶融法によっても同上の系のガラス化領を求め,DTA測定を行った。B_2O_3ーNa_2O系のTc/T_L比はB_2O_3=70モル%および80モル%にそれぞれ極大値および極小値が現れた。ガラスについても同様な組成依存性が現れることを確認した,Tc/T_L比はゲルやガラスの熱的安定性を示とと同時にその生成能を示す示標であることが確かめられた。Tc/T_Lー臨界冷却速度Qとの対応関係を実験値から検討した。更に理論的考察を加えた。
著者
吉本 正 谷田 創 田中 智夫
出版者
麻布大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1989 (Released:1989-04-01)

研究者らは1985年以来,暑熱環境における雄豚のサマ-ステリリティについて検討を行ない,30〜35^。Cの環境温度において3〜6週間飼養すると明らかに造精機能が低下することを認めた.現在は,その造精機能の低下防止について検討を行なっており,平成元年からは当補助金を受け,局所冷却による造精機能の低下防止法について検討を行っている.初年度は,自然環境下において局所冷却(豚の首〜肩部に水滴を落下させる drip cooling法)を行ない,その効果をサ-モグラフィ-を用いて生理反応の面から検討した.その結果,自然環境温(29〜31^。C)の条件下においては,局所冷却を行なうことによって豚体の皮膚表面温を2〜3^。C抑制する効果が認められた.2年度は環境調節室を用い,適温期(24^。C一定)を3日間,加温期(33^。C,10h;28^。C,14h)を4週間とし,大ヨ-クシャ-種雄豚6頭を用いて,同様の調査を行なった。実験1では,水滴の落下位置を検討するために,33^。Cの室温において,頭部,頸部,精巣部に水滴を11分ごとに1分間,滴下させて,それが全身の皮膚温に及ぼす影響を調査した.その結果,頸部に水滴を落下させた場合に全身の皮膚温を低下させる効果が認められた.実験2では,実験1の結果を基に,頸部に水滴を落下させた場合における適温期および加温期(33^。時)の心拍,呼吸,直腸温,サ-モグラフィ-による皮膚温および精液性状を調査した.その結果,心拍数および呼吸数に対しては大きな影響を与えなかったが,直腸温および皮膚表面温については約1^。C上昇を抑える効果が認められた.以上のことから,drip coolingによる局所冷却は,雄豚のサマ-ステリリティ-の方止に十分,活用できる方法であることが示唆された.
著者
田端 英雄 柴坂 三根夫 藤田 昇 田中 歩
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1993 (Released:1993-04-01)

ミズゴケ湿原の水質とミズゴケの消長の関係を調べるために、京都市深泥池浮島高層湿原に生育するハリミズゴケとオオミズゴケの成長実験をpH緩衝液と深泥池の水とで行った。緩衝液で培養すると両種ともに水のpHが5.9を越えると枯死した。カルシウムイオンは従来言われているようなpHの中性化と相乗したミズゴケ類への阻害作用はなく、逆にpH上昇による枯死作用を緩和した。pHの上昇以外にリン酸イオンがミズゴケに有害であった。深泥池集水域っからの降水時の様々な流入水で培養した場合はpHが6前後でも電気伝導度が50(μS/cm,25C)より小さいとミズゴケは健全に生育し、大きいと枯死した。ミズゴケ自体は周りの水を酸性にする働きをもっているので、同じpH6の水でも電気伝導度が大きくて緩衝能が高い水だと枯死し、電気伝導度が小さくて緩衝能が低い水だと生育が可能になる。ただ水質の安定した静水と違って流入水の場合は採水後に可溶化してイオンになる物質が多く含まれており、流入後に電気伝導度とpHが高くなることに注意する必要がある。都市域にある深泥池でも降水はもちろん降水が二次林林床からの地表水やチャート基岩からの湧水として集水域の低山から流入する水はpHが5台で、電気伝導度が30より小さく、ミズゴケの生育に十分な水質であった。一方、開発された集水域や自動車道路からの流入水はpHが6以上、電気伝導度が50以上でミズゴケを枯死させる水質であった。以上のことから、ミズゴケ湿原は直接の降水および自然度の高い集水域からの降水によって涵養されている限り健全に発達するが、火開発された集水域からの汚染水や地下水、河川水などpHと電気伝導度が高い富栄養化した水が集水域から流入すると衰退し、消滅していくことが明らかになった。
著者
大川 周治 守谷 直史 野崎 晋一
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1992 (Released:1992-04-01)

プロスポーツ選手を用いて、スポーツ時における咀嚼筋の活動様相を解明するとともに,各種スポーツ行動時における咀嚼筋の役割を明確にすることを目的として,以下の実験を行った。プロサッカー選手(サンフレッチェ広島)6名に対してシュート(強蹴)5回,シュート(軽蹴)5回,遠蹴5回を,プロ野球選手(広島東洋カープ)のうち,投手4名に対してスローボール5回,剛速球5回を,打者7名に対してトスバッティング(軽振)5回,トスバッティング(強振)5回を行わせた。被検筋は左右咬筋,左右側頭筋前部,およびサッカーでは左右大腿四頭筋外側広筋,蹴足の腓腹筋内側頭,野球では利き腕の上腕二頭筋,上腕三頭筋,尺側手根屈筋とした。各被験運動時の筋活動に関する記録分析,及び各被験運動のビデオ録画による動作分析を行った。なお,コントロールとして最大咬みしめを5秒間行わせた。その結果,サッカーではシュート(強蹴)時,咀嚼筋に筋活動が認められた被験者と,ほとんど認められない被験者に分類される傾向があった。野球ではトスバッティング(強振)時,及び剛速球投球時,大半の被験者において咀嚼筋に筋活動が認められた。以上より,全身的に最大筋力の発揮が要求されるようなスポーツ行動時には咀嚼筋が同調して活動している可能性が示唆されたが,スポーツの種類ないし動作の内容により影響を受ける可能性も示唆された。現在,これらの咀嚼筋活動に関して,筋活動持続時間,積分値,最大咬みしめ時筋活動量に対する比率,動作との関連性について分析中である。ハンドボール(湧永製薬),バレーボール(JT)に関しても,同様に記録分析し,各種スポーツ行動時における咀嚼筋の役割をより明確にしていく予定である。なお,本研究に対してNHKが興味を示し,サッカーに関しては中国地方及び近畿地方に,野球に関しては日本全国に向けて,本研究の内容がテレビ放映されたことを付記しておく。
著者
森沢 正昭 小笠原 強 林 博司
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1985 (Released:1987-03-31)

61年度の研究により単一の成功まで精製されたニジマス精子の運動関始の〓絡的な引き金をひくと考えられている15Kタンパン質について精製タンパク質及び15Kタンパク質の抗体の精子運動装置,軸系の運動性に対する影響について調べた. その結果,強い界面活性剤処理によって運動性も乗った軸系が15Kタンパク質を添加することにより運動性を回復すること,15Kタンパン質の抗体は15Kタンパン質のリン酸化を抑制すると同時に軸系の運動性も阻害することが明らかとなり,15Kタンパク質のリン酸化が真に粒子運動開始機構の重要なステップであることが示唆された. 一方,Protein kinaseの非特異的阻害試薬は15Kタンパク質を含む軸系上の全てのリン酸化タンパク質のリン酸化を抑制し,同時に軸系の運動も抑えること,Tyrosine kinaseに特異的な阻害試薬は15Kタンパク質のリン酸化のみを抑え,軸系の運動も抑えることなどから,CAMPは直接Tyrosine kinaseを活性化するのではなくCAMP→普通のProtein kinaseの活性化→tyrosline kinaseのリン酸化と活性化→15Kタンパン質のリン酸化という過程を経て精子運動開始が起ると考えられる. 更に種々のProteaseがCAMP無しで独果に精子運動開始を誘起すること,protease阻害試薬,基質が精子運動性を抑制する事からproteaseの精子運動開始への寄与が強く示唆された. 現在,上記三要因の軸系タンパクのリン酸化に対する影響について調べており,その結果の解析が3サケ科魚粘で精子運動開始機構の全貌が解明されることが期待される. 又,海産無稚動物,哺乳類についても15Kタンパク質の検索を行い,ウニ等では本タンパン質の存在が確認された. K^T/Ca^<Zr>→CAMP→Protein kinase→154タンパク質のリン酸化→Proteaseの関子というカスケードが多くの動物に共通の精子運動関始機構であることが明らかとなることはそう遠い将来ではないと考えられる.
著者
村上 保壽 村上 保寿(1989)
出版者
山口大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1988 (Released:1989-04-01)

1.空海の密教思想における超越論的構造をさぐるために、今年度は十住心思想の論理的展開の構造に中心を置いて研究した。その結果、第一住心から第十住心までの展開構造が、二重の意味で三段階の展開になっているという知見を得た。2.すなわち、空海の十住心思想は、従来、竪横の二元的二重構造によって理解されてきたが、この構造では、その論理的展開が充分に把握することができない。すなわち、住心間の展開の必然性がダイナミックに説明できないからである。そこで、世間心の三住心の論理が否定の論理であることに注目した結果、十住心思想の論理が弁証法的な三段階の展開になっていることが分かった。3.以上の知見から、世間心の三住心は、閉ざされた世界-開かれた世界-閉じられた世界の三段階の世界構造であると把握することができた。その結果、この三段階の世界構造は十住心世界全体においても妥当し、世間心-出世間心-第十秘密荘厳心という三段階の心の展開であり、その世界は、閉ざされた-開かれた-閉じられた世界構造になっているという知見を得たのである。4.この研究のさらなる発展のためには、第十住心の世界が世間心と出世間心との総合であること、しかしその論理がたんなる否定の論理ではなく、最高の肯定の論理であることを論証する必要がある。それとともに、空海に大きな影響を与えた『釈摩訶衍論』の研究と「不二」概念についての考察の必要がある。
著者
今中 忠行 森川 正章
出版者
大阪大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1993 (Released:1993-04-01)

【1】HD-1株宿主-ベクター系の開発HD-1株を宿主とした形質転換系を構築することを目的としてまず、各種抗生物質に対する耐性をしらべた。その結果、カナマイシン(Km)、テトラサイクリン(Tc)、アンピシリン(Ap)、クロラムフェニコール(Cm)、カルベニシリン(Cd)に対する耐性は全くなく(5μg/ml以下)、ストレプトマイシン(Sm)に対しては10μg/mlが生育限界濃度であった。続いてこれまでに開発されたPseudomonas属を含むグラム陰性細菌に広く利用されている広宿主域ベクターや大腸菌用のベクターなどを中心にエレクトロポレーション法によるHD-1株の形質転換実験を行った。それぞれのベクターにコードされている各種薬剤耐性を獲得した細胞を形質転換体として選択した。その結果、グラム陰性用広宿主域ベクターRSF1010によってHD-1株の形質転換が可能であることが判った。細胞を懸濁する溶液としては10%グリセロールが適していると思われた。実際に、Sm耐性株(形質転換体)からプラスミドを抽出してアガロースゲル電気泳動で調べた結果、RSF1010の存在が確認できた。この結果は、RSF1010はHD-1株細胞内で独立複製可能であることも示している。種々の条件を検討した結果、HD-1株の形質転換最適条件は以下の通りである。宿主(HD-1株),定常期前期菌体:ベクター,RSF1010(Sm^r):選択圧,Sm20μg/ml:電気パルス(方形波):電界強度,5kV/cm:パルス幅,1ms:遺伝子発現までの培養時間,3時間。以上の条件で得られる最大形質転換頻度は3.3×10^<-5>transformants/viable cell、最大形質転換効率は1.1×10^5transformants/μgDNAであった。【2】アルカン/アルケン生合成経路の解明まず、生物学的にCO_2からアルカン/アルケンを合成する経路のなかで最も研究が遅れており、実際反応律速になっている可能性が高いと思われる脂肪酸からアルカン/アルケンへの変換反応について検討した。緑藻類などを用いた研究成果からは脂肪酸から直接アルカン/アルケンを合成しているのではなく、脂肪酸からアルデヒドになった後アルカン/アルケンに変換される可能性が示唆されている。そこでHD-1株が最も多く蓄積していたヘキサデカン(C16)の前駆物質であると予想されるパルミチン酸あるいはヘキサデカナ-ルを使ってアルカン/アルケンの生成が実際に起こるかを調べた。^<14>C-パルミチン酸は市販のものを利用した。^<14>C-MEKISAデカナ-ルは入手不可能であったため^<14>C-パルミチン酸から化学合成した。アルカン/アルケンの生成反応は以下のようにして行った。基質である^<14>-パルミチン酸あるいは^<14>C-ヘキサデカナ-ルを含むリン酸緩衝液(pH7.0)/1%Triton X-100をナスフラスコ内でArガス通気により脱酸素処理する。同様に脱酸素処理した細胞抽出液を嫌気性ボックス内で添加後密栓する。これを遮光した湯浴中で37℃24時間保温した。反応産物を含む疎水性画分をクロロホルム抽出し、基質のみで保温したコントロールと共にシリカゲル60TLC(ヘキサンおよびヘキサン,ジエチルエーテル,ギ酸)で展開し、脂肪酸あるいはアルデヒド画分(Rf=0.5-0.7)をアルカン/アルケン画分(Rf=0.9以上)を厳密に分けて回収した。液体シンチレーションカウンターによりそれぞれの放射活性を測定した。この結果から、微量であるが細胞抽出液を加えた場合にのみアルカン/アルケの生成が確認できた。さらに脂肪酸にくらべてアルデヒドの方がアルカン/アルケンの生成率が良いことから、細菌においても脂肪酸はアルデヒドを経由してアルカン/アルケンに変換されることが強く示唆された。現在細胞抽出液をカラムクロマトグラフィーなどにより分画して、本酵素活性(アルデヒトデカルボニラーゼ)の精製を目指している。
著者
和田 修二 高木 英明 田中 昌人 坂野 登 柴野 昌山 岡田 渥美
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1987 (Released:1987-04-01)

今年度において特に明らかになった重要な知見として次のようなものがある。1.今日の大学教育のあり方を考える上で、最も重要な論点の一つは、大学教育におけるいわゆる「一般教育」の位置づけにあると思われる。しかし、戦後の大学改革の経過においても「専門教育」と「一般教育」との接続の仕方は未だ十分に改善されているとは言い難く、その結果「一般教育」の必要性すら疑問に付されている。しかし、一方で専門的な学習・研究にとって「一般教育」は依然として不可欠であり、また他面、現在ではむしろ大学が融通の効かない専門家ではなく、「一般教育」を十分に身につけ広い視野をもった人材育成の場となることも各界から望まれているという事実もあり、この点に鑑みれば、「専門教育」の準備段階としてのみならず、それをより高い次元で総合し、広め深めるもっと積極的な意義と位置を「一般教育」に与えることが、今後の大学改革にとって必要な視点と思われる。2.今日の大学のあり方の問題に関わって、企業による新卒学生の選抜過程や、学生生活の実態の調査から次のような新しい観点も提出された。従来大学の機能は専ら専門的な技能や知識の習得にあると考えられてきたが、しかし現実には、大学は各学生の一種の社会化をフォ-マル・インフォ-マルに促進する「かくれた」機能ももっており、この点も明確に考慮にいれた大学の改革が必要である。3.近年社会人の再教育・継続教育の場として大学が注目されているが、大学入試制度の一環たる社会人入学の選抜方法は未だ模索中であると言える。わが国の選抜方法は、諸外国に比べ入学希望者にとって比較的条件の厳しいものであり、この点では更に多様で開かれた選抜方法の可能性が検討される必要がある。
著者
今田 洋三 林 公子 岸 文和 梶川 信行 高坂 史朗 浅野 洋
出版者
近畿大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1993 (Released:1993-04-01)

18世紀は、旧来のメディア構造が大幅に組み替えられ、新しいメディアが続々と創出される時代であった。本研究では、おもに、18世紀における日本経済の中心地であった大阪に焦点を当てて、さまざまな「発信者」と「受信者」の間を媒介するメディアの〈多様性〉と〈多層性〉を、そしてその歴史的な〈変容〉と〈組み替え〉の過程を考察することを試みた。具体的には、先行の出版都市であった京都の圧倒的な力量(仏・儒書・史書・医書等の内典・外典、和文古典類約7000点)に対して、新興都市・大阪が生み出した「大阪(上方)的」なメディアの《新しさ》を、さまざまジャンル(文芸書・実用書・市民的学芸書・戯場書・絵本・一枚刷りなど)において検証することを行なった。研究代表者・今田は、メディアの≪新しさ≫を、出版物の「指示世界」の≪新しさ≫、「著者」と「読者」の≪新しさ≫、そして、両者を統合する〈仲介者〉としての「本屋」の《新しさ》の点で分析することを試み、江戸の須原屋市兵衛と大阪の柏原屋清右衛門を比較することを通して、18世紀における出版事業の革新性を検討した。共同研究者・浅野は、石川五右衛門をめぐるさまざまな伝説を18世紀大阪におけるピカレスク・ロマン(悪漢小説)の生成という観点から検討し、また梶川は、大友皇子の伝承を18世紀の地誌類を手がかりにして考察した。同じく高坂は、ヨーロッパの天文学が本木良永や志筑忠雄といった人物によってどのように受容されたかを検討し、岸は、「各所案内記」や「名所図会」に収められたイメージの分析を通して、18世紀後期における挿絵の〈メディア的性格〉の変容について考察した。また林は、『戯場楽屋図会』の分析を通して、歌舞伎をめぐる情報とメディアについて検討を加えた。
著者
谷 泰 串田 秀也 藤田 隆則 菅原 和孝
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991 (Released:1991-04-01)

社会過程は、言語を中心にした相互行為的なコミュニケーションの場で、織りなされる関係の維持・更新の過程として記述されうる。その原型は、見る・見られる関係で、発話が交わされる、対面的なインターラクションにある。そこでは表象的な指示行為、措定される言及世界への関与、文脈前提を顧慮した言及世界の読みが重要な注目点となり、それらの諸類型を形式的に一般化することは、特殊の記述にとっても重要である。言語行為論、認知科学、相互行為理論、人類学の一部で、この基礎的作業は、開始されたばかりで、より精力的、かつ緻密な分析が求められている。この作業目的にそって、京都大学人文科学研究所で、代表責任者(谷)は、「コミュニケーションの自然誌」と言う共同研究を行ってきたが、補助申請は、この一貫としてなされた。二年間、多様な場面での会話状況資料の収集と分析が行われた。収集資料の一部は、本報告書に示されているが、ちかく資料集としてまとめる予定。分析の成果としては、1)言及世界への関与と会話の組織化に関する面で、従来注目されていたシーケンス・コントロールと言った面とは別に、あらたな関与形式の諸類型(対照形成、メンタル・スペースの変換などなど)が、摘出された(串田)。これらの視点は、今後、協調と支配の隠された側面を見いだす際に有効なものとなろう。2)会話に於て生起する笑いを、関与主体の読みの状態への関数として理解し、その機能を追求した。言及世界措定の相互的一致を作業前提のもとで、読みにおいて措定される文脈前提が、補追される情報を契機に、上位の階型に移行するときの自己言及として捉えた。それは、相互了解・齟齬・欺瞞という、コミュニケーション上の問題と密接に係わった、パン・ヒューマンな能力のひとつとみなしうることを示した(谷)。
著者
匂坂 勝之助 荒木 忠 大和田 琢二 藤川 清三
出版者
北海道大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1990 (Released:1990-04-01)

プラスチド イニシャル形成と低温度要求性:休眠覚醒後にプラスチド イニシャルの形成が始まるので、休眠覚醒のおこる低温度と覚醒のみられない環境条件下にポプラをおいて比較検討した実験で、休眠覚醒のみられないポプラではプラスチド イニシャルの形成は全く進行しないことがあきらかになった。プラスチド イニシャルは遊離状態で存在すること:ポプラの皮層部から遊離状態のプラスチド イニシャルを得た。プラスチド イニシャルの形成は多年生植物(樹木)で一般的にみられること:ダケカンバ、エゾニワトコ、スグリ、キタコブシ等の皮層細胞に休眠覚醒後にプラスチド イニシャルが存在することを明かにした。草木植物にプラスチド イニシャルが存在することを証明する予備的調査:ジャガイモ魂茎の形成期にアミロプラストの前駆体と思われる構造体の存在することを確かめた。この研究は現在継続中である。プラスチド イニシャル形成は各組織で同時に始まる:リンゴの花芽、葉芽及びシュートの皮層細胞でこのことを明らかにした。成熟プラスチドを経ないプラスチド イニシャルの形成:リンゴの花芽、葉芽及び皮層細胞から成熟プラスチドを経ない新しい形成過程を示す電子顕微鏡像を得た。この実験で、プラスチド イニシャルの形成に小胞体が直接関与していること及び小胞が活発に形成されてプラスチドイニシャルに融合している電顕像を得た。
著者
首藤 伸夫 三浦 哲 今村 文彦
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1993 (Released:1993-04-01)

標準的には、津波は海底地震にともなって発生するものとされており、その初期波形を断層パラメーターに基づいて計算するのが現在の一般的な手法である。しかし、断層運動と海底地盤の変動の大小とに一定の関係が存在するという保証はない。(1)2枚の断層からなる1983年の日本海中部地震では、断層運動から推定される津波と現実の津波の間に矛盾があった。その最大の難点は、現実の津波が深浦地点で約2分、能代辺りで約10分早く到達することである北断層では主断層と共役である方向に副断層の存在した可能性があり、これを考慮すると深浦への到達時間は説明できた。南断層では、通常の地震計では記録できない地盤変動が生じたとすると能代周辺の津波到達時間を説明できた。しかし、この時、何故この第1波が能代の検潮記録に記録されなかったかの疑問が残る。当時の写真から第1波のソリトン波列への発達が確認され、検潮所の水理特性により記録されないことが確認された。(2)1992年のニカラグァ津波では、陸地で感じられた地震動が震度2(気象庁震度階)であった。津波発生のメカニズムを検討した結果、地震動を伴ってはいたが、津波地震とするのが適当であることが判った。(3)1993年の北海道南西沖地震で発生した津波の内、北海道西岸を襲った津波第1波は、その襲来が早かった。断層位置から発生した津波は、現実の津波より5分ほど到達が遅い。断層と海岸の間で、地震とは直接関係の無い津波発生機構があった事が強く示唆された。(4)地震動を伴わない津波発生の内、犠牲者3万人を越えると言われている1883年クラカトア島陥没による津波発生を再現した。発生箇所での急激な陥没を不安定を起こさずに計算できる手法を開発した。
著者
藤澤 令夫 小澤 和道 美濃 正 山本 耕平 木曽 好能 酒井 修
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1986 (Released:1987-03-31)

昨年度に続いて本年度も各研究分担領域で「壊疑」のもつそれぞれの意味と役割を究明し, 西洋哲学における壊疑論の歴史的変遷を跡づけることに努めた. 古代ギリシアでは後期に懐疑派が現れるが, この派の哲学の全体的特徴はセクストス・エンペイリコス著『ピュロン哲学の概要』に述べられている. それによれば懐疑哲学では判断保留とそれに伴う平静な悟脱の心境が問題とされ, 特にその判断保留の十箇の方式をめぐってはその著の第14章で詳述されている. 教父哲学ではアウグスティヌスによる新アカデミア派の懐疑論克服が問題とされるが, 彼の『自由意志論』第2巻では「神の存在論証」と相俟って真理の超越的独存性が立証され, 真の認識の成立根拠が確証される. 彼の影響下にある中世哲学では基本的には懐疑の問題は主要な関心事とはならなかった. このような哲学としてはトマスの哲学が取り上げられ, 彼のessentia概念の二義性が抽象説との関係において論じられる. 近世ではデカルトが一切のものに対して徹底して懐疑を行なった末にcogito ergo sumという不可疑的な真理の発見に到るが, これに対するストローソンの批判が考察される. 彼のデカルト批判によれば, cogito ergo sumを成立させる「私」という個体の存在は「私」以外の他の個体の存在を既に前提とする. つまり, 個体指示表現が有意味であるためには, 個体とそれ以外の個体との識別可能性の原理の働くことを認めねばならないと言えよう. 現代の英米哲学においても懐疑論に関係する多くの問題がみられる. その一つに, 経験的認識の証拠による不十分決定underdeterminationの問題が挙げられる. 今日の反実在論の多くはこの「証拠による不十分決定」に依拠している点である意味での懐疑論の変種とみなすことも不適切とは言えない. 又, 懐疑論・弁証法・解釈学・ニヒリズム相互の関係も本研究において深く問題としてきた哲学的・倫理的課題である.
著者
位藤 邦生 吉田 典可 小林 芳規
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1993 (Released:1993-04-01)

本研究は角筆文献の発見者でありその後の角筆文献研究を領導してきた小林芳規を研究分担者に迎えて、角筆文献をさらに発掘し、従来の語学的見地からのみでなく、広く文化史資料として角筆文献を活用せんとする試みであった。さらに角筆文献によって得られる情報(文字情報および絵画情報)を画像処理によってコンピュータに入力し、それらの情報を国内外の研究者に提供する方法の研究を同時に行ってきた。位藤邦生は山口県宇部市厚東にある恒石八幡宮蔵『角筆下絵八幡大菩薩御縁起』に注目し、これを三原市御調八幡宮蔵『角筆下絵八幡大菩薩御縁起』と比較することによって両本の関係や中世において寺社縁起の類がどのようにド伝播したかの研究を進めた。小林芳規は二年間にわたって全国各地の図書館や文庫に赴き、多くの角筆文献を発見調査した。これまでの全発見点数は平成7年3月現在で1,485点にのぼっている。そうした発見の文献の中には、大英博物館蔵の敦煌文献中にあった角筆文献があり、日本における角筆文献の淵源としての中国大陸での角筆使用の実態を探ることが今後の重要な研究課題となった。また高野長英が獄中で書いた角筆による手紙が解読され、脱獄の半年前から長英が脱獄の意思を持っていたことが判明した。広島大学が新たに購入した角筆文献の中には千利休の聚落屋敷の絵図等があり、これには角筆で方眼が描かれている。角筆文献の大半は漢籍であるが、山林の境界線を角筆で描いたものなど、さまざまな分野の文献が発見され、文化史的見地からの研究は今後ますます重要になることが予想される。文字だけでなくこうした絵画・地図資料等をコンピュータに入れて提供する方法の検討も今後併せて行われなければならない。
著者
寺田 孚 柳谷 俊 松本 義雄 斎藤 敏明
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1990 (Released:1990-04-01)

研究成果の概要は次のようである。1.ある垂直応力状態のもとでせん断を行うと、不連続面の凹凸の周波数成分のうちある周波数の凹凸を境に、それより高周波の凹凸はその特性に変化があり破壊が生じていると思われるが、それより低周波の凹凸には変化がなかった。2.せん断変形の進行とともに、高周波の凹凸から破壊が進行し、破壊が生じない限界の周波数の凹凸で乗り越えが起こり、残留せん断強度を示すと考えられる。3.ピ-ク強度を示すまでは剛性の強い高周波域の凹凸がせん断荷重を受持ち不連続面の凹凸はしっかりかみこんで変形しているが、ピ-クに達すると高周波域の凹凸のある領域にわたって一挙に破壊する。4.ピ-ク強度を過ぎると破壊と乗り越えを繰り返しながら徐々にせん断荷重を受け持つ周波数帯は低周波側に移動し、それにつれてせん断強度も低下する。完全な乗り越え状態に達すると一定の残留強度となる。5.残留状態までは、削り取るにたらない低周波の凹凸の上をすべりつつも、その上に存在する小さな凹凸を破壊して平滑化するので、垂直方向の膨張量がわがかずつ減少し、それに呼応してせん断強度も小さくなる。これは岩石の鉱物粒径にはあまり関係がなく、垂直応力にのみ依存する。6.残留強度は乗り越える凹凸の周波数に大きく依存するが、ピ-ク強度はさらに供試体の強度特性などにも影響を受けるので、ピ-ク強度の方が残留強度よりばらつきが大きい。