著者
椙山 一典 岩崎 信 北村 正晴
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1988

原子力デ-タとしての中性子断面積は,新型炉や将来の核融合炉のみならずさまざまの広い応用分野に於て基礎的かつもっとも重要な物理量として位置づけられ,信頼性の高いデ-タが広い核種にわたって要求されている.近年原子力の基礎的分野の人員や予算不足のために,核デ-タ評価においてこの様な強い要求に答えることは困難になっている.今まで以上の国際協力のみならず革新的な技術の応用が必要である.本研究課題では中性子核デ-タの評価作業に対する支援システムを構築するための知識工学的手法導入の可能性について検討した.以下に研究成果をまとめる.1評価作業を分析した結果その作業は,個別手続き,デ-タベ-スと従来の評価用コ-ド群を結び付けるネットワ-クモデルで表現できる.その各ノ-ドは二つのタイプ:デ-タや属性の集まりとタスクにわけられ,それぞれオブジェクトとしてモデル化できる.2デ-タオブジェクトとしては評価の目標,基礎核特性デ-タ,核反応,反応断面積,核反応モデルとコ-ド,計算用モデルパラメ-タ断面積実験値等であり,3タスクオブジェクトとしては評価目標の設定,基礎核特性デ-タの準備,モデルコ-ドの選択,モデルパラメ-タの初期値選択,パラメ-タの調整,比較対象断面積の準備,計算値と実験値の比較判断,目標致達の判定等である.4オブジェクト間のやり取りはメッセ-ジ交換メカニズムを使う.5上記モデルの一部を32ビットワ-クステ-ション上にNEXPERT OBJECTによって実現した.6従来の理論モデルコ-ド移植し,各種の新しいデ-タベ-スを構築してシステムに組み込んだ,7オデジェクト指向モデルを採用した結果試験システムは理解性,拡張性,保守性の高いものとなり,本格システムの実現性を明かにした.
著者
木谷 照夫 水木 満佐央 田川 進一 倉垣 弘彦
出版者
大阪大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1993

慢性疲労症候群(CFS)は、その特異な病態から近年強い注目を集め、社会的にも関心の深い疾患である。本疾患の病因については様々な説が提唱されているが未だ明らかでない。我々は細胞のエネルギー供給の代謝系において極めて重要な役割をはたしているカルニチンを測定したところ、血中の遊離カルニチンは正常ながら、アシルカルニチン値が大部分の症例で有意に低下していることを見い出した。尿中排泄増加はなく、ミトコンドリアにおける脂肪酸酸化を中心とした代謝系の何らかの異常が想定され、疲労を中心としたCFSの症状との関連が示唆された。また、カルニチン正常,アシルカルニチン低下という病態は現在までに数例の先天性異常例以外には知られておらず、検査法としての診断的意義も大きい。ともあれCFSでは生体代謝に関して生化学的に異常が見られたのは本物質が初めてである。これまでCFSで臨床検査異常や生化学的代謝物質の異常が見られないことより心因的機能的病態とする見解も少なくなかったが、我々の成績は器質的病変であることを強く示唆し、世界に大きなインパクトを与えた。本研究は、CFSにおけるアシルカルニチン減少のメカニズムを明らかにすることをめざすとともに、細胞レベルでのアシルカルニチンの作用やその代謝について下記の点について検討したものである。1)サイトカインとアシルカルニチンとの関連についてア)インターフェロンとの関連イ)TNFとの関連2)内在性アシルカルニチンの生理的意義についてア)絶食による変化イ)絶食後再節食による変化ウ)糖負荷による変化エ)糖負荷にともなうアシルカルニチンの動的変化の解析3)細胞内アシルカルニチンの測定4)治療の試み
著者
吉田 奎介 白井 良夫 塚田 一博 川口 英弘
出版者
新潟大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1988

初年度と2年度にはMCPAとBOPの至適投与量に関する基礎的検討並びに農薬検出法の検討を行った。最終年度は、MCPAのBOP胆嚢発癌促進作用並びに胆石症患者胆汁中の農薬排泄の有無につき検討した。1. BOP長期投与によるハムスタ-胆道上皮の変化及びMCPA同時投与の影響: (1)BOP単独投与の効果;BOP20ppm含有水を摂取させ、20週で肝内に細胆管増生86.7%、異型上皮20.0%、肝外胆管に異型上皮6.7%、胆嚢に異型上皮6.7%の発生を認めた。(2)MCPA単独投与の効果:MCPA 4000ppm含有固形飼料摂取20週で肝内には細胆管増生を60.0%に認めたが、異型上皮の発現は認められなかった。(3)BOP,MCPA同時投与の効果:肝内には細胆管増生100%、異型上皮12.5%を認め、肝外胆管に上皮内癌6.3%、異型上皮31.3%を認めた。 小括:MCPA単独では胆道に異型上皮を誘発しなかったが、BOPによる異型上皮の発生を有意に(P〈0.05)促進し、少数ながら胆管癌の発生を誘発した。今回の実験では、胆嚢に異型上皮は発生しなかった。2.人胆汁中農薬の検出について: 人胆汁中にCNPが1pg/μ1、p,p'ーDDTO.8pg/μ1及びBHC(痕跡)が検出された。しかしMCPAは検出されなかった。〔結論〕MCPAは、BOPによる胆嚢の異型上皮の発生を促進しなかったが、胆管ではBOPによる異型上皮の発生を促進した。この結果より、MCPAは胆道上皮に対して発癌プロモ-タ-作用を持つ可能性が示唆された。人胆汁中では、MCPAは検出されなかった。今後、土中ならびに人体内でのMCPAの分解・代謝過程を明らかにし、MCPAならびにその代謝産物の胆汁中排泄の有無を確認したい。疫学上胆道癌死亡率と関連性有りとされたCNPが胆汁中に検出されたことより、その発癌作用についても検討する必要がある。使用禁止後長期経過した農薬が未だに人胆汁中に検出されたことから、体内残留農薬の発癌への影響についても検討が必要と考えられた。
著者
野村 大成 山本 修 石井 裕
出版者
大阪大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1988

放射線や、化学物質の遺伝的影響は、マウス特定座位法(100万マウス実験)に代表される如く、その検出に膨大な費用と施設を必要とし、現在ではその実施は不可能に近い。しかし、野村による“マウス催奇性突然変異"は、父または母マウスに放射線を照射し、正常マウスと交配すると次世代に奇形が誘発されることを発見したものであり、短期間に少数のマウスで異常を検出でき、しかも、ヒトに見られるのと同一の奇形が誘発された。以下に3年間の正果をまとめた。1.催奇性突然変異検出法の確立(化学物質での応用): X線のみならず、ENU、DMBA、4NQOを雄マウスに投与することにより、F_1に奇形は誘発された。しかも、X線による結果とは異り、ENUは精原細胞期の方が高感受性であった。特定座位法による結果と完全に一致した。2.機能異常(仮死)の検出法の確立: ENUおよびX線を雄マウスに作用させ、F_1胎児を妊娠18日目に帝王切開にて取り出し、人工蘇生を行った。蘇生不能児(仮死)がF_1に有意に高率に誘発され、その半数は形態学的奇形を伴っていなかった。3.誘発奇形の遺伝性: F_1に誘発される奇形の多くは致死的なものであった。生存可能な奇形のうち、小人症、曲尾は、次世代に低い浸透率ながら遺伝することが解った。4.精子授精能への障害: 微量の合成洗剤につけたヒトおよびマウス精子は、ハムスタ-卵に対し授精能力を失うことが解った。5.WHO勧告の作成: 野村による催奇性突然変異検出法を医薬品や環境有害物質の遺伝毒性検出法として用い得るか否か、平成2年4月、WHOにて討議し、加盟国への勧告文を作成した。6.将来への展望: 本検出法は、追試もなされ、確立された。今後はヒトでの疫学的調査と機能異常児の検出が重要である。
著者
蓮實 重彦 中地 義和 工藤 庸子 保苅 瑞穂
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

1960年代から今日に至るまで、フローベールは、もっとも刺激的な批評装置を生み出す源泉でありつづけた作家である。とりわけ近年飛躍的発展を遂げた草稿研究と生成論的アプローチの領域では、プルースト、ランボー、ゾラ等とならんで、実質的踏査と理論的探究の両面においてもっとも充実した成果を見せている。本研究は、(1)フランス国立図書館とルーアン市立図書館に統合されたフローベール草稿資料のうち、マイクロ・フィルムあるいはコピーの形で入手することが可能なものをすべて購入し、日本国内の資料センターとしての機能を果たすこと(2)パリのCNR(国立科学研究センター)の活動に呼応して、研究教育センターとしての活動にとり組むこと、以上2点を目標としたものである。科学研究費補助金の交付を受けた2年間に達成した具体的な成果のうち主なものは以下の通り。1.『ボヴァリー夫人』『感情教育』『ブヴァールとペキュシェ』のマイクロ・フィルムをすべてA3版にプリント・アウトし、ナンバーを打つ(必要なフォリオを適宜参照するにはこの形式の資料を備えておくことが必要不可欠である)。現在マイクロ・フィルムは存在せず、A4版コピーのみ入手可能な『聖アントワーヌの誘惑』『サラムボー』『三つ物語』の草稿資料を購入し、内容を検討し分類整理してナンバーを打つ。以上で資料センターとしての物理的条件はほぼ整った。2.3500枚に及ぶ『ボヴァリー夫人』草稿の表裏のすべての内容を検討し、決定稿の該当ページとの対応を一覧表に作成した。これは草稿研究の基礎作業として極めて価値あるものであり、すでにCNRの研究グループから注目されている。現在は、若手研究者の積極的な参加と協力を得て、未完の問題作である『ブヴァールとペキュシェ』草稿の資料分析をすすめており、今後も大きな成果が期待される次第である。
著者
前島 郁雄 鈴木 啓介 田上 善夫 岡 秀一 野上 道男 三上 岳彦
出版者
東京都立大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1987

本年度は、3年間の研究計画の最終年度であり、研究成果をまとめると以下の通りである。1.全国19地点の日記の天候記録をもとに、1771-1840年の70年間について、夏季4ケ月(6〜9月)の毎日の天候分布図を完成した。次に、北海道を除く全国を5つの地域に区分し、各地域毎に降雨の有無の判定を行なった。降雨の有無を1と0とで表現し、その組み合せから、全32タイプの天候分布型を設定して毎日の天候分布型の分類を行なった。その結果を天候分布型カレンダ-としてまとめた(成果報告書参照)。2.一方、現在の天候デ-タを用いて、上記と同様の方法で1975〜84年の10年間について、天候分布型の分類を行なった。気圧配置型については、吉野ほか(1967、1975、1985)による分類法を若干修正して用いることにした。各天候分布型に対応する日の気圧配置型を集計して、両者の対応関係を検討した。その結果、一つの天候分布型に対して必ずしも一義的に気圧配置型が対応しないことが明らかになった。3.最終的に、次の手順で気圧配置型の復元を試みることにした。(1)歴史時代の毎日の天候分布図を作成し、上述の方法で32通りの天候分布型に分類する。(2)現在の観測デ-タに基き作成した各天候分布型に対応する前線と高低気圧・台風中心位置の合成図を参考に、ワ-クシ-トを作成する。ワ-クシ-トには、想定される概略的な前線と高低気圧の中心位置を書き込む。この場合、連続性や高低気圧の移動速度等を考察する。(3)完成したワ-クシ-トをもとに、毎日の気圧配置性を吉野らによる分類法にしたがって復元する。本研究では、実際に1783年(天明の飢餓年)の6〜7月の気圧配置型の復元を試みた。
著者
寺田 孚 柳谷 俊 松本 義雄 斎藤 敏明
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1990

研究成果の概要は次のようである。1.ある垂直応力状態のもとでせん断を行うと、不連続面の凹凸の周波数成分のうちある周波数の凹凸を境に、それより高周波の凹凸はその特性に変化があり破壊が生じていると思われるが、それより低周波の凹凸には変化がなかった。2.せん断変形の進行とともに、高周波の凹凸から破壊が進行し、破壊が生じない限界の周波数の凹凸で乗り越えが起こり、残留せん断強度を示すと考えられる。3.ピ-ク強度を示すまでは剛性の強い高周波域の凹凸がせん断荷重を受持ち不連続面の凹凸はしっかりかみこんで変形しているが、ピ-クに達すると高周波域の凹凸のある領域にわたって一挙に破壊する。4.ピ-ク強度を過ぎると破壊と乗り越えを繰り返しながら徐々にせん断荷重を受け持つ周波数帯は低周波側に移動し、それにつれてせん断強度も低下する。完全な乗り越え状態に達すると一定の残留強度となる。5.残留状態までは、削り取るにたらない低周波の凹凸の上をすべりつつも、その上に存在する小さな凹凸を破壊して平滑化するので、垂直方向の膨張量がわがかずつ減少し、それに呼応してせん断強度も小さくなる。これは岩石の鉱物粒径にはあまり関係がなく、垂直応力にのみ依存する。6.残留強度は乗り越える凹凸の周波数に大きく依存するが、ピ-ク強度はさらに供試体の強度特性などにも影響を受けるので、ピ-ク強度の方が残留強度よりばらつきが大きい。
著者
木村 美恵子 横井 克彦 糸川 嘉則 増田 徹 平池 秀和
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1992

近年、免疫能の低下が問題である癌や感染症も栄養状態が大きく関与している可能性が指摘されるようになってきた。他方、必須微量栄養素の1つであるマグネシウムを欠乏させた動物では、著明な脾臓や胸線の肥大、リンパ球こ増加、カテコールアミンやセロトニンの代謝異常が認められることを明らかにしてきた。これまでのこれらの研究成果に注目し、今回は、マグネシウム栄養と免疫能の関連を明かにするため、免疫応答能に及ぼすマグネシウム欠乏の影響について検討した。マグネシウム欠乏飼料で1または2週間飼育したラット及び正常飼料で飼育した対照群ラットの脾細胞および腹くうマクロファージ(MΦ)を無菌的に採取し、脾細胞はマイトジェン(ConA,LPS)刺激による幼若化反応及びサイトカイン(IL-2,IL-3)活性、腹くうMΦはIL-1,IL-6活性を測定した。また、脾細胞からT細胞を分離して、MΦと混合培養して、それぞれの機能をさらに詳細に検討した。マグネシウム欠乏飼料で飼育したラットの脾細胞のConAにたいする幼若化能は正常飼料摂取群に比較して、著しく低下していた。LPSにたいする反応性はConAのような大きな変化は認められなかった。脾細胞のサイトカイン産生能は、ConA反応性の低下が認められたに関わらず、マグネシウム欠乏群のIL-2値がやや高値であった。MΦのサイトカイン産生能はIL-2,IL-6ともにマグネシウム欠乏群で高値の傾向があった。脾T細胞とMΦの相互作用では、T細胞自体はマグネシウム欠乏と対照群の間で差が認められなかったが、マグネシウム欠乏群のMΦはConAにたいする反応性を補助する能力が低下していた。以上、マグネシウム欠乏による免疫応答能低下の影響が確認された。
著者
谷村 弘 内山 和久 石本 喜和男 OCHIAI Minoru TUJI Takeshi IWAHASHI Makoto 岩橋 誠
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

炎症性腸疾患における食物繊維の意義は、いまだ未解決のままである。われわれは、その原因は、食物繊維の特性の違いを無視した検討がなされてきたためであると考える。そこで、特性のことなる2つの食物繊維(15%セルロースと10%フラクトオリゴ糖)と無繊維食、普通食をラット、デキストラン硫酸ナトリウム誘発潰瘍性大腸炎モデルに投与し、糞便中短鎖脂肪酸、腸内細菌叢、病理組織学的検討を行い、食物繊維の炎症予防効果、治癒促進効果について検討した。その結果、同じ食物繊維でもセルロースに代表される不溶性で、刺激性の強い食物繊維は、むしろ炎症を助長するが、フラクトオリゴ糖では、腸内細菌叢を早期に改善し、短鎖脂肪酸を増加させ、腸内環境をいちはやく改善し、炎症予防・治癒促進の両面の作用を有することが判明した。この理由としては、まず第一にフラクトオリゴ糖が水様性で、発酵性に富み、なかでもビフィズス菌に選択的に利用される特性からビフィズス菌優位の腸内細菌叢を作り出し、短鎖脂肪酸代謝を活性化するためであると考える。短鎖脂肪酸は、大腸粘膜細胞のエネルギー源であり、細胞回転率を高め、粘膜血流を増加させ、水分や電解質の吸収を調整し、腸管の蠕動運動を高める作用がある。このような作用が抗炎症的効果を産み出したものと考える。また臨床例においても、フラクトオリゴ糖10〜30g/日を投与した結果、腸内細菌の改善や短鎖脂肪酸の増加に有用であり、そのような症例では、便性の改善や臨床症状の改善が認めれ、新食物繊維としてのフラクトオリゴ糖の有用性が確認された。
著者
横山 正
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1990

1.資料の収集 これについては平成2年度に相当の成果をおさめたが、それにひきつづき、未収集で重要なものの収集につとめた。しかし店頭に古書としてあらわれるものには、もはや目新しいものは無く、それゆえ方針を切りかえて、図書館,個人の収蔵本で必要なものを撮影あるいは複写して収集することに力点を置いた。しかし設備備品費(旅費予定分も自己負担で旅をすることで一部これに充てた)によって購入した書籍には、研究の遂行上、きわめて有益なものが多く、直接の原典では無くても充分、研究成果をあげるのに役立った。一部、朝鮮半島関係の資料が入手出来たことも、研究に大いに参考になった。2.資料の分析 資料の分析も同じく平成2年度にひきつづき進めた。分析にあたっては、とくに庭園書についてまとまった成果が早く得られそうなことから、庭園書にかなり力点を置く形で研究を進めた。カ-ド化及びデ-タ・ベ-ス化の作業も前年度にひきつづいて行なったが、デ-タ・ベ-スについては、この研究を今後も進めていくなかで、かなりの手直しをしなければならないかと考えている。分析の進展につれて新しい視かた,分類の仕方が考えられて来たからである。3.総括 今回の研究についてはそれなりのいちおうの総括は可能であり、再度、分析内容を再検討して順次、論文として発表していく予定であるが、とにかくきわめて〓大でしかも複雑な内容が対象であるために、そのすべてをいますぐ総括するのは不可能である。今回の研究のかなりの力点はとりあえず資料を収集,分析することにあり、今後、これによって出来た蓄積によって、その成果を数年かけて発表していくことになると考える。
著者
森 勝義 高橋 計介 尾定 誠 松谷 武成
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1992

1.マガキ液性因子の同定マガキの生体防御機構に関わると推測される液性因子を生化学的に特定した。まず、血リンパから210kDaのサブユニットからなるホモ二量体の420kDaのフィブロネクチンの精製に成功した。また、血リンパに少なくとも3種類存在すると考えられたレクチンのうち、約630kDa(22kDaと23kDaのサブユニットからなるヘテロポリマー)のEレクチンと約660kDa(21.5kDaと22.5kDaのサブユニットからなるヘテロポリマー)のHレクチンを精製した。さらに、殺菌因子として消化盲襄から17kDaのリゾチーム分子を精製し、食細胞による食菌後の殺菌に強く関与するミエロペルオキシダーゼがマガキ血球で初めて同定された。2.各因子の特性と細胞性因子との関係マガキフィブロネクチンはヒト、ニジマスフィブロネクチンとは血清学的に交差性はなかったものの、共通の細胞認識領域を持つことから、創傷部への細胞の誘導接着への積極的関与が推察された。Eレクチン、Hレクチンを含むそれぞれの活性画分に細菌に対する強い凝集作用が認められると同時に、凝集活性の見られない他の多くの細菌への結合も確認され、レクチンの幅広い異物認識機能が明らかになった。しかし、細菌への結合とそれに続く食作用のこう亢進との関連で期待された、オプソニン効果は見られなかった。精製された消化盲襄由来のリゾチームは、その特性からこれまで報告してきたリゾチーム活性を示した分子であり、外套膜由来リゾチームも同一成分であると考えられた。一方、至適pHが異なり、従来のリゾチームが示したのとは異なる細菌に対しても細菌活性を示す成分が消化盲襄に局在し、リゾチームとの関係に興味がもたれた。リゾチーム活性は血球には認められていないが、食菌後の殺菌を担う次亜塩素酸合成を仲介するミエロペルオキシダーゼの存在が証明され、細胞性の殺菌機構の一端が明らかとなった。
著者
藤井 博信 梅尾 和則 鈴木 孝至 桜井 醇児 藤田 敏三 高畠 敏郎 溶野 稔一
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

セリウム(Ce)やウラン(U)を含む一連の金属間化合物において、f-電子は配位子のs,p,d-電子との混成効果によって強い電子相関を保ちながら結晶中を偏歴し、低温で重い電子状態を形成する。それと同時に近藤格子型相互作用によって極めて異常な基底状態が出現する。本研究では、基底状態で示す種々の特異な物性が異方的混成効果に起源する現象であると考え、純良単結晶を育成し、それを用いた系統的な物性研究を計画した。まずトリ・アーク溶解炉、赤外線集中加熱炉、高周波溶解炉を整備しチョコラルスキー法による単結晶の育成法の確立に着手した。良質なCeNiSn,CeNi_2Sn_2CePt _2Sn_2,Upd_2などを含め7種類の単結晶の育成に成攻した。これら結晶を用いて、電気抵抗、帯磁率、熱電能、ホール係数、比熱および超音波による弾性定数などの異方性の測定を行った。主な成果を要約すると、(1)CeNiSnは斜方晶(ε-TiNiSi型)のa軸に沿って磁場(H>13T)を印加すると、V字型のギャップが潰れ半導体から金属へ転移し重い電子状態が複活する又圧力(P≧20kbar)を作用することによってギャップが異方的に潰れる、一方同じ結晶構造を示すCePtSnは0.3Kまで金属として振舞う。(2)CePdInとUPdInは同じ結晶構造(ZrNiAl-型六方晶)をとるが、それらが示す物性は極めて対照的な振まい(Pa>Pc:波数ベクトルQ=(0.25,0,0)forCe系とPa<PcQ=(0,0,0.40)forU系)を示し、異方的混成効果がCePdInでは結晶場効果と逆方向へ作用(帯磁率へ対して)し、UPdInでは結晶場効果と増強する方向へ作用する、(3)CeNi_2Sn_2Cept D22 D2 SnD22D2は異常に重い電子状態(γ〜5J/mole)を形成し、極めて異方的な物性を示す。その解析より、結晶場励起エネルギーが低く、近藤効果とRKKY相互作用が競合した新しいタイプの重い電子状態であることなどが明らかにされた。今後は、更に純良な単結晶育成法を確立し、詳細で多面的な研究を行う予定である。
著者
中谷 英明 江島 惠教
出版者
神戸学院大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1993

1.パーリデータベースの構築研究代表者と分担者は、Association for Pali Text Inputting(=APTI,代表江島恵教(本研究分担者))の活動を通じて、データ入力と、校正作業を継続した。APTI会員は本年10名増加して36名に達した.本年度実績は下記のとおり.(1)校了テキスト:Udana,Thera-theri-gatha.(2)校正中テキスト:Cullaniddesa,Petakopadesa, Dhammasangani.(3)入力テキストKhuddakapatha,Mahaniddesa,Patisambhidamagga,Buddhavamsa,Milin-dapanha,Vibhanga,Paramatthajotika II,Atthasalini.2.データベース作成マニュアル4種のマニュアルを作成した.(1)「APTIへの誘い」(2)「RECOGINITA PLUS使用法」,(3)「OCRデータ処理手順」,(4)「インド学研究とコンピュータ利用」.3.サンスクリットデータ処理システムほぼ完成した.4.研究用プログラムの開発と研究韻律分析プログラムは高島淳助教授(東京外国語大学)の協力によってほぼ完成した.これを利用した研究論文1篇を発表した.(裏面「研究発表」参照)
著者
市川 定夫
出版者
埼玉大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1993

本研究では、平成5〜7年度にわたり、ムラサキツユクサの雄蕊毛を用いて、(1)アルキル化剤の変異原性とX線との相乗効果、(2)除草剤として使われているマレイン酸ヒドラジドの変異原性とX線との相互作用、(3)大気汚染物質の変異原性、(4)自然突然変異頻度の変動などを調査するとともに、(5)新しい実験材料システムの開発についての研究も行ってきた。(1)に関する研究では、エチルメタンスルホン酸(EMS)、メチルメタンスルホン酸(MMS)、硫酸ジメチル(DMS)、N-エチル-N-ニトロソ尿素(ENU)、N-メチル-N-ニトロソ尿素(MNU)について調査し、それぞれの変異原性を確かめるとともに、EMS、MMS、DMSとMNUがX線と明らかな相乗効果を示すことを確かめた。(2)については、プロミュータジェンであるマレイン酸ヒドラジド(MH)がムラサキツユクサの細胞内で活性化されて変異原となること、MHがX線と相乗的にも相殺的にも働くこと、MHの活性化にはペルオキシダーゼが関与しており、X線がこの活性化を抑制すると相殺効果が、抑制しなければ相乗効果が現れることを明らかにした。(3)の研究では、ガス曝露装置を用いて、窒素酸化物を窒素中で処理したり、空気/窒素混合気体中で処理したりしたが、安定した結果は得られなかった。オゾン処理については、オゾン発生装置を完成し、現在実験中である。(4)については、安定株でも、温度条件によって自然突然変異頻度がある程度変動することを確かめた。また、(5)についても、培養液循環環境制御栽培装置で栽培したBNL4430株の根付き植物を実験材料とするのが最も有効であることを確かめた。
著者
遠藤 康男 只野 武 中村 雅典 田端 孝義 渡辺 誠
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1994

遠藤らの研究成果に基づく仮説“筋肉疲労が筋肉組織からサイトカインのinterleukin(IL-1)を遊離させ,この因子が筋肉組織にヒスタミン合成酵素のHDCを誘導し、持続的なヒスタミンの産生をもたらし,顎関節症などにおける筋肉痛を引き起こすのではないか?"を検討し,以下の結果を得た.(1)マウスの大腿四頭筋と咬筋を電気刺激すると,刺激の強さに比例してHDC活性が増加する.(2)強制歩行(筋肉運動)により、大腿四頭筋のHDC活性は歩行時間に比例して増加する.(3)筋肉でのHDC誘導に肥満細胞(ヒスタミン貯蔵細胞)は関与しない.(4)抗ヒスタミン剤のクロルフェニラミン(CP,ヒスタミンH1受容体の遮断薬)と,これまで臨床的に使用されてきた消炎鎮痛薬(プロスタグランジン合成阻害薬)のフルルビプロフェン(FB)について,顎関節症患者への臨床効果を比較した.CPでは,肩こりや頭痛などの併発症状の改善も含め,約80%の患者に対し改善効果が認められ,一方,FBでは改善効果は約40%であり,副作用の胃障害のため,投与中止のケースも生じた.CPでは,副作用はよく知られている眠気だけであった.(5)IL-1をマウスに注射すると,種々の組織でヒスタミン合成酵素のHDCが誘導されるが,大腿四頭筋および咬筋においてもHDCが誘導される.IL-1による筋肉でのHDC誘導は,電気刺激や運動の場合よりも速やかに起こり,IL-1は1μg/kgの微量の用量でHDCを誘導する.(6)マクロファージや血管内皮細胞は免疫学的刺激により,IL-1を産生することが知られる.筆者らは筋肉疲労もIL-1の産生をもたらすのではないかと予測し,IL-1の抗体とmicro ELIZA systemを用いて,血清中のIL-1の測定を試みたが,検出出来なかった.そこで,筋肉組織について,組織化学的にIL-1の検出を試みた.その結果,筋肉組織にはIL-1のβ型が存在し,毛細血管にも分布するが大部分は筋肉細胞のミトコンドリアに分布し,非運動時にも存在することを発見した.IL-1βは不活性な前駆体として合成され,酵素のプロセシングにより活性型に交換され細胞外に遊離されると言われる.従って,この発見は上記の仮説を補強する。しかし,非運動時の筋肉ミトコンドリアでの存在は予想外の発見である.(7)従来より疲労物質と考えられてきた乳酸が筋肉のHDC活性を調節する可能性は少ないものと思われる.(8)運動による筋肉でのHDC誘導の程度は,性差や年齢差,トレーニングの有無,マウス系統の違いなどで異なる.高齢マウスでは高いHDCの活性が誘導され,また,トレーニングはHDC活性の誘導を抑制する.以上の結果より筋肉疲労について次のメカニズムが想定されるに至った,IL-1β前駆体(血管内皮細胞および筋肉ミトコンドリアに分布)→運動に伴うミトコンドリア活性化/プロセシング酵素の活性化→活性型IL-1βの遊離→IL-1βによる血管内皮細胞の刺激→血管内皮細胞におけるHDCの誘導→ヒスタミン産生と放出→細胞脈の拡張,血管透過性亢進,筋肉痛(警告反応)→血液・筋肉細胞間の物質交換亢進/休息→疲労回復.また,本研究において,抗ヒスタミン剤は顎関節症の治療に有効な手段となることが示唆され,さらに,筋肉ミトコンドリアでのIL-1βの発見は,IL-1βによる筋肉細胞の調節という新たな研究の展開をもたらした.
著者
村山 忍三 那須 民江 青山 俊文
出版者
信州大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

1.遺伝子工学的に合成されたヒトP450による有機溶剤の代謝を検討した。これらのP450のトルエン,エチルベンゼン,スチレンの代謝への寄与は類似しており,最も代謝活性が高いのはCYP2B6で,CYP2F1,CYP2E1,CYP1A2,CYP2C8,CYD4B1がこれに次いでいた。CYP3A3,CYP3A4,CYP3A5も活性を示したが,その程度は僅かであった。CYP2A6,CYP2C9,CYP2D6の有機溶剤の代謝活性は殆ど認められなかった。一方ベンゼンとフェノールの代謝活性が最も高いのはCYD2E1であった。CYP1A2,CYP2B6,CYP2C8,CYP2F1のこれらの代謝への寄与は非常に低かった。しかしCYP1A2/1は骨髄で発現されているが、CYP2E1は発現していないので、ベンゼンの骨髄毒性という観点からはCYP1A2の方が重要である。2.トルエンの代謝をモデルとして、CYP2B1-次構造とトルエンの代謝物生成との関連性を検討した。58番目のLenをPheに置換するとベンジルアルコール(BA)の生成は60%以上保持されるが、O-とP-クレゾールの生成は消失していた。114番目のlleをPheに置換するとすべての代謝物が50%以下に低下したが、トルエン環の水酸化は確実に保持されていた。282番目の置換(Glu→Val)はトルエンの代謝に大きな影響を与えなかった。CYP2B1によるトルエン環の水酸化には58番目のLeuが重要な役割を果しているといえよう。3.ヒトの肝のみならず肺ミクロソームにおいて多くの有機溶剤が代謝された。しかし肺における代謝速度は肝の数パーセントであった。喫煙は肝においてトルエンからO-クレゾールの生成を促進させ、肺におけるスチレンの代謝を亢進させた。飲酒の有機溶剤の代謝に与える影響は認められなかった。ヒトの肺におけるトルエンの代謝のパターンは肝におけるパターンと異っていた。すなわち、肝ではO-とP-クレゾールの生成比率は10%以下であったが、肺においてはそれぞれ20%と30%であった。
著者
大田 陸夫 福永 二郎
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1990

溶融法によるガラスの作製においては高融点系では溶融温度に実験上の制限がある一方,結晶化しやすい系や組成ではガラスを得ることが出来ない,ゾルゲル法においてはゾル溶液からゲルを経て,ガラスを作製するので溶融法における高融点のため実験不能という事態は避けられる。しかしながらゲルの生成能はガラスの生成能と深く関連しており,ゲルからガラスを作製する上でもゲルの熱的安定性が問題になる,本研究では基本的な系として,B_2O_3ーNa_2O,B_2O_3ーNa_2OーAl_2O_3およびSiO_2ーNa_2O系をモデルとしてとり上げ,ゾルゲル法によるゲルの熱的安定性を調べ,ガラス化領域とゾルゲル法によってどの程度広げられるかという問題に答えるための研究を行った。まず上記の系のゲル化領域とゲルの熱的安定性を調べた。ゲル化領域に対する水分,塩酸,アンモニアの添加の影響と検討した。ゲル化領域はB_2O_3ーNa_2O系ではB_2O_3=100および<60モル%以外の組成域であった。B_2O_3ーNa_2OーAl_2O_3系ではB_2O_3ーNa_2O系で結晶化した領域がゲル化するところも現れた。SiO_2ーNa_2O系ではゲル化領域はSiO_2=60ー100モル%組域であった。ゲル化領域は水の添加によって殆ど変化せず,塩酸の添加によってはゲル化領域はSiO_2=100%組成似外は存在しなかった。ゲル化特間は水分またはアンモニアの添加とともに短縮した,ゲルを昇温速度5℃/分でDTA測定を行い,発熱ピ-クから結晶開始温度Tcを決定した。T_LはDTAおよび加熱マテ-ジ付き顕微鏡によって直接観察して求めた。溶融法によっても同上の系のガラス化領を求め,DTA測定を行った。B_2O_3ーNa_2O系のTc/T_L比はB_2O_3=70モル%および80モル%にそれぞれ極大値および極小値が現れた。ガラスについても同様な組成依存性が現れることを確認した,Tc/T_L比はゲルやガラスの熱的安定性を示とと同時にその生成能を示す示標であることが確かめられた。Tc/T_Lー臨界冷却速度Qとの対応関係を実験値から検討した。更に理論的考察を加えた。
著者
渡邊 浩 平林 民雄
出版者
筑波大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1986

本研究では(1)二次元ゲル電気泳動法による群体間の質的な違いの検索、(2)イタボヤ二種における群体特異性の記載、(3)拒絶反応の組織・微細構造学的観察、(4)ホヤ被嚢の組織・微細構造学的観察についてそれぞれ以下の成果を得た。(1)についてはクローン株の間で易動度の異なる種内変異と判断されるタンパクを数種見つけることができたが、群体特異性とそのタンパク群との関連性は見いだせなかった。(2)最も進化した有性生殖(胎性)を行うイタボヤ二種(Botrylloides violceus,B.fuscus)はこれまで知られていなかった新しいタイプの群体特異性を示すことが明らかになった。また、本種では自己・非自己認織の場が被嚢(特に被嚢細胞)に限定されていることが示唆された。(3)拒絶反応は本質的には血球の1種であるmorula cellが被嚢内に浸潤し、これが崩壊して含有物を放出することと、被嚢内に壊死した組織と群体とを仕切るnew wallが形成されることであるらしい。(4)イタボヤ類の被嚢は特異な構造を持ったcuticle層が最外層を覆っているが、同様な構造は近縁の単体ホヤにも見られるため、この構造は群体特異性に直接は関与しないと思われる。被嚢中には種によって一〜三種の被嚢細胞が観察される。予報的な知見ではあるが、特にvacuolated tunic cellは被嚢内における自己・非自己認織と深くかかわっている可能性がある。本研究によって、イタボヤ類における群体特異性の進化や拒絶反応の詳細について深い議論が行えるようになってきたが、「認織」のステップについてはまだ不明確な点も多い。しかし(2)については自己・非自己認織の場について、(4)では認織担当細胞について議論してゆく端緒が得られてきている。今後(3)(4)の研究を発展させてゆくことによって、更に認織機構の実体に近づいていくことが期待される。