著者
榎園 淳一
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.134, no.2, pp.78-81, 2009 (Released:2009-08-12)
参考文献数
14
被引用文献数
1

薬物の多くは,血漿中でアルブミンやα1-酸性糖タンパクなどのタンパク質へ結合している.アルブミンは脂溶性の高い酸性化合物,α1-酸性糖タンパクは塩基性化合物に対し高い親和性を示す.タンパクへ結合した薬物は細胞膜を透過することができないため,血漿中の遊離型薬物のみが組織に分布して薬効や毒性を発現し,代謝や排泄を受けて体内から除去される.したがって,血漿中タンパク結合は薬物の体内動態や薬効,毒性に多大な影響を及ぼす.血漿中タンパク結合には種差があり,体内動態や薬効,毒性の種差の原因となる.また,血漿中タンパク結合は病態や薬物間相互作用によっても変動し,薬効の減弱や副作用の増強など臨床上好ましくない現象を引き起こす場合がある.したがって,薬物の血漿中タンパク結合は医薬品の探索・開発を通じて評価しなければならない重要な項目の一つである.