著者
榎本 真俊 櫨山 寛章 奥田 剛 山口 英
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.3_58-3_69, 2015

インターネットの規模拡張性の検証やインターネット上の大規模攻撃を模擬する環境として,大規模なサーバクラスタ型テストベッド上に仮想計算機を用いて擬似的なインターネット環境を構築する,インターネットエミュレーションの研究が行われている.インターネットエミュレーションのうち,EBGPルータを用いAS(Autonomous System)網を構築し,ASレベルでのBGPのパス特性やAS間での連携が必要なインターネット技術またはソフトウェアの挙動の観察を目的としたエミュレーション手法を本稿ではASエミュレーションと呼ぶ.ASエミュレーションにおいて,サーバクラスタの限られた物理計算機上でAS数を最大化するために,仮想計算機技術が用いられる.この際,限られた物理計算機から個々の仮想計算機が必要とする量の資源を適切に割り当て,仮想計算機の多重度を上げる必要がある.メモリ資源に着目すると,EBGPで構成されたAS網で個々のBGPルータが必要とするメモリの最適解を求めることは,その計算量の複雑さから,現実的に困難であり,日々拡張していくインターネットの特性をサーバクラスタ上に模擬するためのメモリ量推定手法として向いていない.そこで,本論文ではソースコードレベルでの静的解析と小規模な実験における動態解析の結果を元に曲線回帰よってモデル化することで使用メモリ量の推定を行う手法を提案する.提案手法の妥当性は大規模サーバクラスタであるStarBEDにて,Quagga bgpdを用いたASエミュレーションに対し,Quagga bgpdのソースコードの静的解析と,仮想マシン100台まで動的解析を元にモデル化を行い,最大1500台の仮想マシンによるASエミュレーション環境の構築を通して,その適合性の検証を行った.その結果,提案手法は従来手法より計算量,規模追従性の点で優れていることが明らかとなった.