著者
伊藤 真理 栗原 早苗 榑松 久美子 多田 昌代 戸田 美和子
出版者
日本クリティカルケア看護学会
雑誌
日本クリティカルケア看護学会誌 (ISSN:18808913)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.11-21, 2014-10-01 (Released:2014-10-01)
参考文献数
40
被引用文献数
1 1

本研究の目的は,集中治療室で終末期に至った患者に対し,急性・重症患者看護専門看護師(以下,CCNS )が,どのような倫理調整を行っているかを明らかにすることである.10 名のCCNS を対象に半構造化面接を行い,質的帰納的手法で分析した.分析した結果,【終末期に至る予測と積極的治療の限界を見極める】【患者の意思確認が難しい状況でもあきらめずに意思をくみ取る】【一人で意思決定しなければならない家族の重荷を分かち合う】【代理意思決定をする家族の後悔を最小限にする】【患者の命をあきらめきれない家族の苦悩を引き受ける】【集中治療の延長線上で可能な限り望ましい看取りを行う】【困難な決断をしなければならない医師の重責を理解し対立を避ける】【患者を失う医療者のやるせない気持ちに対処する】など,13 カテゴリーが抽出された. CCNS は,患者を対象とした権利擁護,家族を対象とした代理意思決定支援と悲嘆ケア,患者と家族を対象とした望ましい死への援助,医療チームを対象とした終末期ケアにチームで取り組む土壌作りを担っていたと考えられる.
著者
榑松 久美子 黒田 裕子
出版者
日本クリティカルケア看護学会
雑誌
日本クリティカルケア看護学会誌 (ISSN:18808913)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.89-97, 2006 (Released:2015-05-19)
参考文献数
24
被引用文献数
1

突然に発症し,意識障害に至った患者の配偶者の心理社会的な体験を記述し,看護支援を探求することを目的とし,一事例に基づいて探究した.参加者は,くも膜下出血で集中治療終了後も GCS8 以下の意識障害が続いた 50 歳代女性患者の配偶者(夫)50 歳代 1 名であった.参加観察法,半構成的面接法に加え,診療録・看護記録から得たデータをもとに,患者の病状が変化した時点,および配偶者の言動が変化した部分に注目し,配偶者の体験の意味を解釈した.分析の結果,配偶者の心理社会的体験は,第 1 段階:妻が生き抜くことをひたすら望む,第 2 段階:意識が障害された妻を受け入れることに葛藤する,第 3 段階:意識が障害されてしまった妻の存在とは何かを考え,今後の人生をどのように生きていくかを模索する,の 3 段階に変化することが明らかとなった.この中で配偶者は,身近に存在する他の家族や状況を理解する医療者に支えられ,意識障害となった妻を受けとめていたと考えられた.各段階の特徴を読み取り,配偶者の安寧を目指した適切な看護支援を行う必要性が示唆された.