著者
榛木 美恵子
出版者
近畿大学臨床心理センター
雑誌
近畿大学臨床心理センター紀要 = Bulletin of center for clinical psychology Kinki University
巻号頁・発行日
no.2, pp.25-33, 2009-09-01

[要約] 内観法の創始者・吉本伊信が、内観体験のすばらしさを世界中の人々に紹介したいと、私財を投げ打って内観普及に励んで、半世紀以上となる。本年は、奈良県で開催された日本内観学会に、中国から27名が参加し、5論文が発表された。また、9月には、中国山東省で第二回中国内観療法学会が開催される。このように、1993年に中国に内観が導入されて以来、その後の発展と研究の進歩は、著しい。 さて、仏教は538年、中国・韓国を経て、日本に渡来した。この頃、わが国は中国・隋との交易や朝鮮半島との交流が始まった。このような日本の国際社会化の中で、聖徳太子(574年-622年)は『三宝興隆の詔』(仏・法・僧)を発令して、仏教を保護し、神道との融合をはかった。やがて、渡来した仏教は日本の風土・文化の中で独自に発達し、多くの人々の精神的な支えとなっていった。吉本伊信の内観法は、鎌倉時代、日本の土壌中のから誕生した仏教、浄土真宗を礎に1939年、師匠の駒谷諦信とともに開発した。その後内観法は、事業・教育・矯正教育・医学・家族関係の各方面に普及し、現在では、精神療法としても海外でも高く評価をうけるようになり、人間性の回復、社会生活復帰、心の養生として広く応用されている。本論では、この内観法の誕生と国際化について報告する。