著者
樋口 福也 島田 美樹子
出版者
桐丘学園 桐生大学・桐生大学短期大学部
雑誌
桐生大学紀要 (ISSN:21864748)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.49-54, 2021 (Released:2022-04-02)
参考文献数
8

慢性腎臓病は,腎機能が徐々に低下し末期腎不全に進行するため,食事療法は一生涯を通じて行う必要があり, たんぱく質や塩分,カリウム,リンの制限など多くの配慮を伴う. 慢性腎臓病患者のハレの食事に焦点を当て,療養食の可能性を模索し,患者のQOL向上を目的として行った. 食事は,慢性腎臓病食との互換性が見込まれ,ハレの日の食事に適した非日常を演出するために「イタリアコー ス料理」とした. 献立はエネルギーとたんぱく質,塩分を調整した3種類とし,試作および試食後のアンケートを実施した. 試作したコース料理は,献立全体の味付け,量,料理の組み合わせ,演出性のそれぞれの観点から高い評価を得 られた.また,栄養価に関しては予定通りのエネルギー量とたんぱく質量を達成できた. 慢性腎臓病食とイタリアコース料理との互換性を示すことができ,また,コース料理の形式を採用することで, 制限による量の少なさを感じにくくすることが満足感に寄与していると考えられる. 今回の結果をもとに,今後はより種類豊富な献立の開発を行い,より多くの疾患を持つ人に適応するコース料理 として開発を進めていきたい.