著者
横山 桐郎
出版者
社団法人日本動物学会
雑誌
動物学雑誌 (ISSN:00445118)
巻号頁・発行日
vol.37, no.436, pp.60-68, 1925-03-10

近來樺太島就中南部樺太地方の昆虫相に注目する人士輩出し該島の昆虫相目を追ふて闡明せられつヽあるは寔に喜ぶ可きである。特に蝶類相に至っては可なりな進歩を見せてゐる。然し乍ら他の目の昆虫相となると未だ未だ暗黒の状態を脱し得ない、曾て松村博士の發表された「樺太昆虫相の第一貢獻」なる論文は此暗黒界に向つて投ぜられた暁の第一線であった。然して該島のハネカクシ相に至っては松村博士の報告に發表された十種以外には全く不明である。私が今から記さうとするのは南樺太産ハネカクシの一部で大正十二、十三、兩年、鹿野忠雄君の採集品である。種數僅かに七族十二属二十三種所謂大海の一滴に過ぎないが、珍しい者新しい者も多少含んで居る故該島の昆虫相の知識に對する、一貢獻として茲に發表する事とした。