著者
菅野 浩一 溝尻 顕爾 江角 凱夫 高市 松夫 東条 英晃 横島 徹熹
出版者
The Japanese Society for the Study of Xenobiotics
雑誌
薬物動態 (ISSN:09161139)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.237-246, 1987 (Released:2007-03-29)
参考文献数
6
被引用文献数
2 1

14C-Sch-19927を30mg/kgで雄性イヌに単回あるいは10回反復経口投与後の吸収,代謝および排泄について検討した. 1.単回投与後の血漿中放射能濃度は,投与後2時間に最高(15.22μg/ml)を示した後,8時間まで半減期4.43時間で消失した.投与後2時間の血漿中放射能の26%は未変化体であり,主な代謝物としてMD1が40%,M3が25%認められた.イヌ血漿のin vitro蛋白結合率は,0.1および1μg/mlでは90%以上であったが,10μg/mlでは60%であった.ヒト血漿の蛋白結合率は,いずれの濃度でも約70%であった.In vivoでのイヌ血漿蛋白結合率は,投与後2時間に35%を示した後,経時的に増加し,投与後24時間では69%となった. 2.単回投与後120時間までの尿中に66%,糞中に32%の放射能が排泄された.尿中放射能のうち,未変化体は6%であり,主代謝物としてMD1が52%,M3が18%認められた.β-Glucuronidase水解により,M3は全量が,MD1は一部がSch-19927に分解されたが,これはlabetalolのイヌ尿中主代謝物の性質と一致することより,M3はSch-19927のフェノール性グルクロナイドであり,MD1はアルコール性グルクロナイドであると推定された. 3.反復投与期間中,各回投与後24時間の血漿中放射能濃度は,投与回数に伴う濃度変化を示さなかった.最終回投与後の血漿中濃度は,投与後1.5時間に最高値(16.99μg/ml)を示したのち,8時間まで半減期7.12時間で消失し,単回投与に比べて消失は遅くなった.最終回投与後2時間の血漿中放射能の32%は未変化体であり,MD1が28%,M3が17%認められた. 4.反復投与期間中,尿中放射能排泄率は投与回数に伴う変化を示さなかったが,糞中排泄率は5回投与後まで増加した.最終回投与後120時間までの尿中に65%,糞中に31%の放射能が排泄された.尿中には,1回投与の場合と同じ割合の未変化体,主代謝物MD1およびその他の代謝物が検出された.