著者
松下 秀鶴 江角 凱夫 鈴木 彰 半田 隆
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.21, no.11, pp.1471-1478, 1972-11-05 (Released:2009-06-30)
参考文献数
22
被引用文献数
10 10

コールタール中の多環芳香族炭化水素に対する分析法について研究した.その結果,コールタール中の多環芳香族炭化水素の液相分配法による抽出→抽出物の二層二次元薄層クロマトグラフィーによる分離→各分離スポット抽出物の分光けい光分析の手続きからなる分析法を見いだした.本分析法をコールタールに適用した結果,93種の多環芳香族炭化水素類の存在を薄層クロマトグラフィーにより認め,そのうち,24種を分光けい光分析法により同定した.また,同定物質の中に,発がん性物質が10種含まれていることがわかった.このほか,コールタール中に含まれる13種の多環芳香族炭化水素の定量を行なった.その結果,たとえば発がん性を有するベンゾ(a)ピレンは7400ppm,ジベンゾ(a, h)ピレンは120ppm,ジベンゾ(a, i)ピレンは270ppmときわめて多量存在することがわかった.
著者
菅野 浩一 溝尻 顕爾 江角 凱夫 高市 松夫 東条 英晃 横島 徹熹
出版者
The Japanese Society for the Study of Xenobiotics
雑誌
薬物動態 (ISSN:09161139)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.237-246, 1987 (Released:2007-03-29)
参考文献数
6
被引用文献数
2 1

14C-Sch-19927を30mg/kgで雄性イヌに単回あるいは10回反復経口投与後の吸収,代謝および排泄について検討した. 1.単回投与後の血漿中放射能濃度は,投与後2時間に最高(15.22μg/ml)を示した後,8時間まで半減期4.43時間で消失した.投与後2時間の血漿中放射能の26%は未変化体であり,主な代謝物としてMD1が40%,M3が25%認められた.イヌ血漿のin vitro蛋白結合率は,0.1および1μg/mlでは90%以上であったが,10μg/mlでは60%であった.ヒト血漿の蛋白結合率は,いずれの濃度でも約70%であった.In vivoでのイヌ血漿蛋白結合率は,投与後2時間に35%を示した後,経時的に増加し,投与後24時間では69%となった. 2.単回投与後120時間までの尿中に66%,糞中に32%の放射能が排泄された.尿中放射能のうち,未変化体は6%であり,主代謝物としてMD1が52%,M3が18%認められた.β-Glucuronidase水解により,M3は全量が,MD1は一部がSch-19927に分解されたが,これはlabetalolのイヌ尿中主代謝物の性質と一致することより,M3はSch-19927のフェノール性グルクロナイドであり,MD1はアルコール性グルクロナイドであると推定された. 3.反復投与期間中,各回投与後24時間の血漿中放射能濃度は,投与回数に伴う濃度変化を示さなかった.最終回投与後の血漿中濃度は,投与後1.5時間に最高値(16.99μg/ml)を示したのち,8時間まで半減期7.12時間で消失し,単回投与に比べて消失は遅くなった.最終回投与後2時間の血漿中放射能の32%は未変化体であり,MD1が28%,M3が17%認められた. 4.反復投与期間中,尿中放射能排泄率は投与回数に伴う変化を示さなかったが,糞中排泄率は5回投与後まで増加した.最終回投与後120時間までの尿中に65%,糞中に31%の放射能が排泄された.尿中には,1回投与の場合と同じ割合の未変化体,主代謝物MD1およびその他の代謝物が検出された.
著者
増田 啓年 池田 和正 東岡 喜作子 永山 績夫 川口 安郎 堀 勝行 益子 俊之 江角 凱夫
出版者
The Japanese Society for the Study of Xenobiotics
雑誌
薬物動態 (ISSN:09161139)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.289-300, 1997-08-30 (Released:2007-03-29)
参考文献数
7
被引用文献数
7

ラットに[14C-FT]-S-1,[14C-CDHP]-S-1あるいは[14C-Oxo]-S-1を投与しその吸収および排泄について検討し,以下の結果を得た. 1.[14GFT]-S-1を投与した絶食雄性ラットでは,血液中放射能濃度は投与後1時間にCmax 6215 ng eq./mlを示したのち2相性を示して消失する傾向を示した.主排泄経路は尿中であり,投与後72時間までの尿中,糞中およびに呼気中にそれぞれ投与量の74.7%,1.6%および15.5%排泄された.また,投与後48時間までの胆汁中には投与量の4.3%が排泄された. 2.[14C-FT]-S-1を投与した絶食雌性ラットでは雄性ラットと比較して血液中放射能濃度および排泄率に大きな相違は認められなかった. 3.[14C-FT]-S-1を投与した非絶食雄性ラットでは吸収および排泄に食餌による大きな影響はなかった. 4.[14C-FT]-S-1注入後30分における消化管ループからの吸収率は十二指腸で96.0%,空腸で96.2%,回腸で91.4%,結腸で67.8%であった. 5.[14C-CDHP]-S-1を投与した絶食雄性ラットでは,血液中放射能濃度は投与後1時間にCmax 569 ng eq./mlを示したのち1相性を示して消失した.主排泄経路は尿中であり,投与後72時間までの尿中および糞中にそれぞれ投与量の74.8%および22.5%が排泄された.また,投与後48時間までの胆汁中には投与量の1.3%が排泄された. 6.[14C-CDHP]-S-1を投与した絶食雌性ラットでは雄性ラットと比較してCmaxは1.3倍,AUCは1.4倍であったが尿中への排泄率は9.8%少なかった. 7.[14C-CDHP]-S-1を投与した非絶食雄性ラットでは食餌により吸収率は低下した. 8.[14C-CDHP]-S-1注入後30分における消化管ループからの吸収率は十二指腸で18.2%,空腸で20.2%,回腸で12.1%,結腸で4.0%であった. 9.[14C-Oxo]-S-1を投与した絶食雄性ラットでは血液中放射能濃度は投与後1.3時間にCmax 947 ng eq./mlを示したのち2相性を示して消失した.主排泄経路は尿中であり,投与後72時間までの尿中,糞中および呼気中にそれぞれ投与量の70.7%,27.0%および3.0%排泄された.また,投与後48時間までの胆汁中には投与量の1.0%が排泄された. 10.[14C-Oxo]-S-1を投与した絶食雌性ラットでは雄性ラットと比較してCmaxは1.3倍,AUCは1.5倍であったが尿中への排泄率は16.6%少なかった. 11.[14C-Oxo]-S-1を投与した非絶食雄性ラットでは食餌により吸収率は低下し,血液中放射能濃度推移も絶食時と大きく異なった. 12.[14C-Oxo]-S-1注入後30分における消化管ループからの吸収率は十二指腸で20.4%,空腸で37.6%,回腸で18.6%,結腸で6.8%であった.