著者
横川 眞顕
出版者
日本大学
雑誌
日本大学芸術学部紀要 (ISSN:03855910)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.A31-A36, 2006

1920年代初頭、上海を中心として主要都市に次々と大小の映画会社が設立された。その中には名ばかりの会社もあり、その規模も様々であったことは伺い知ることができる。今回、取りあげるのは中国映画史上燦然と輝き、その名を残すことになった極めて重要な映画会社である明星映画会社を取り上げた。明星映画会社は張石川(監督)、鄭正秋(脚本)、張偉涛の3人を鼎として、それに鄭〓鴣(製作)、周剣雲(配給)の5人が中心になって作品作りに努めた。彼等は各自が映画のもつ力、その重要性、当時の中国社会の状況を捉えつつ、人民に啓蒙する主旨をもつことの大切さ等持論を展開し、製作していく一歩を踏みだした。明星映画会社は製作に力を入れるだけでなく、映画俳優を育成する明星影戯学校や映画雑誌「明星」を発行した。明星映画会社が設立される当時の中国社会を背景に、同社の設立とその過程や体制について次回からの明星映画会社と中国映画界及び中国映画の傾向等を検討していく前程ともいえるものである。