著者
浦 康一 橋場 功
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.4, pp.253-260, 1991-04-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
22

選択性除草剤として,フェノキシプロピオン酸エステルあるいはピリジルオキシプロピオン酸エステルが知られている。著者らはフェノキシあるいはピリジルオキシに代わって縮合ヘテロ環を幅広く検討する中,キノキザリン類の中に細葉雑草の除草に卓効のある,有望な化合物群を見いだした。その中で,キザロホップェチル(コード No. NC-302 )は特に強い効力を持ち,茎葉処理型除草剤として企業化された。その工業化に際し,キノキザリン環部の合成は大きな課題の一つであったが,汎用な原料から合成できる簡単な方法を見いだした。また,キザロホヅプェチルは不斉炭素を持ち,光学異性体が存在するが,その有効成分は(R)-(+)体であり,ラセミ体にくらべて2倍の効果を持つ。(0)0(+)体の製造は,分割法ではなく,光学活性な原料を使いラセミ化させない方法で行っている。また,(R)-(+)体は,ラセミ体とは異なり結晶型が二つ存在する。この分測晶析法が発見され,(R)一(+)体の工業化が可能となった。本論文では,特に光学活性キザロホップエチルと,その重要な中間体である2-(4ヒドロキシフェノキシ)プロピオン酸エチルの製造法について,詳しく述べる。