著者
白岩 立彦 橋川 潮
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.1-8, 1993-03-05
被引用文献数
4

ダイズ個体群における捕捉日射エネルギーの乾物への変換効率 (EPAR) の安定性および変動要因を検討した. 1989年に品種エンレイを異なる播種期, 個体密度および畦幅で, 1990年に品種タマホマレを異なる個体密度で, それぞれ圃場栽培した. ダイズ個体群による光合成有効放射 (PAR) の捕捉量と地上部全乾物重の推移を測定したところ, 両者の関係は密接であった. しかしそれは, 生育時期を問わず直線的であるとは単純にはいえず, 両者の比であるEPARは生育初期には増加し, その後やや安定的に推移した後, 子実肥大始 (R5) を過ぎる頃から低下した. このような推移には, 第一に個体群光合成能力の変化が関与すると思われるが, このことに加えて, 生育初期のEPAR増加過程には葉面積増加による光飽和葉の減少が, また生育後期におけるEPAR低下過程には維持呼吸量増大の影響が, それぞれ関与することが示唆された. 安定期におけるEPARは, ほとんどの処理区で2.1〜2.3gMJ^<-1> (1989年) あるいは2.4〜2.5gMJ^<-1> (1990年) の範囲にあり, 播種期, 個体密度あるいは畦幅によっては大きくは変動しないものと思われた. EPARの若干の変動をもたらす要因を検討したところ, EPARは, 葉面積当りN含量とは無相関だったが, 群落吸光係数 (KPAR) との相関は比較的明瞭 (r=0.651) だった.