著者
松川 周 橋本 保彦
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.307-312, 1995-03-20

Q1 ウィーニングとは? ウィーニング(weaning)とは,もともと“離乳あるいは離乳させること”であり,機械的人工換気を受けている患者の換気条件を変えていって最終的に自発換気に移行させる過程が,乳児の離乳の過程を連想させることから,患者が人工呼吸器から離脱していく過程を“ウィーニング”と呼びならわすようになった.しかし,ここで注意しなければならないのは,乳児の離乳が時期が来なければ開始できないように,何らかの機械的人工換気の補助を受けている患者を人工呼吸器から離脱(ウィーニング)させる場合も,それなりの条件が整わなければ不可能な点である. 患者が機械的人工換気を必要とするのにはそれぞれに理由・原因があり,根本原因が解決されていなければ人工呼吸器からの離脱の試みは患者にとって侵襲そのものになってしまう.われわれはしばしば“人工呼吸から離脱する”あるいは“ウィーニングを図る”といった表現をしがちだが,より正確には“患者の状態が改善して機械的人工換気を必要とする度合いが少なくなるのを見定めて,換気条件をより自発換気に近づけていく”のがウィーニングであるといってもよいであろう.さらに踏み込んでいえば,患者が人工換気を必要とする要因を1つ1つ無くしていく治療過程そのものがウィーニングであるともいえる.
著者
佐藤 俊 堀之内 節 皆瀬 敦 松川 周 橋本 保彦 星 邦彦
出版者
The Japanese Society of Intensive Care Medicine
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.203-208, 1996-07-01 (Released:2009-03-27)
参考文献数
7

強制陽圧換気に吸気終末ポーズ(end inspiratory pause; EIP)を付加した時のNondependent zone (NDZ)とDependent zone (DZ)の肺胞内圧を測定した。雑種成犬8頭に麻酔下で気管内挿管後,右下側臥位でFIO21.0,一回換気量20ml・kg-1,換気回数15min-1,PEEP5cmH2Oの条件下に吸気時間(TI)とEIPの組合せをかえて人工換気を行った。左肺下葉(NDZ)と右肺上葉(DZ)のカプセル内圧を測定した。吸気終末肺胞内圧は,TI0.8秒+EIP0秒に比較し,TI2秒+EIP0秒においてDZで有意に上昇した。TI0.8秒+EIP1.2秒では,NDZで有意に低下,DZで有意に上昇した。この結果,NDZ,DZ間の圧較差が減少した。TI0.8秒+EIP1.2秒で,EIP開始時と終了時を比較すると,肺胞内圧はNDZで有意に低下し,DZで有意に上昇した。EIP中に肺胞内圧がNDZでは有意に減衰,DZでは漸増したことから,吸気初期に高圧であった区域から低圧であった区域に肺胞内圧が再分配され,圧分布がより均一になることが確認された。