著者
橋本 博行 池田 達哉 吉光 真人 清田 恭平
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.70-78, 2022-04-25 (Released:2022-06-01)
参考文献数
23
被引用文献数
1

バッター液を調製した調理器具の洗浄後,スポンジたわしに小麦粉が残留することがある.このようなスポンジたわしを洗浄に使用すれば,調理器具間で小麦アレルゲンの二次汚染が懸念される.そこで本研究では,バッター液調理後の洗浄方法として,スポンジたわしによるボウルの洗剤洗浄の条件設定を行って調査を行った.繰り返し試行の結果,バッター液10 gを塗布したボウルから,小麦アレルゲンがスポンジたわしを介して別の未使用ボウルへ陽性率約80%で二次汚染した.洗浄・すすぎ操作後のスポンジたわしにはバッター液由来の残留物が認められ,残留率は20%程度であった.残留状態を詳細に観察したところ,グルテン等のタンパク質がスポンジたわしのセル骨格や骨格間に付着し,そのタンパク質にデンプン粒が付着していた.この状態のスポンジたわしに対してすすぎ条件を追加したが,小麦アレルゲンの完全除去は困難であった.このことから,アレルゲン混入リスクを回避すべきアレルギー対応食等の調理施設では,スポンジたわしは小麦を使用した食品調理器具の洗浄用に専用化することが望ましいと考えられる.