著者
橘 敏雄 上川 外茂次 城後 公典 山村 慶紹
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳動物学雑誌: The Journal of the Mammalogical Society of Japan (ISSN:05460670)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.50-57, 1970

1966年の夏季, および66年より67年にかけての冬季にキュウシュウノウサギの日周活動に関する観察をおこない, いくつかの知見を得た。<BR>A個体 (雌成獣) の活動は夏, 冬ともに19時頃から開始され翌朝7~8時頃に終る夜行型を示した。また夏, 冬を問わず明方休息期へ移る際に激しく走り廻る行動が観察された。この原因は明らかではないが昔から伝えられている寝場に入る前の警戒行動ともみられる。<BR>B個体 (雌亜成) 獣の活動はA個体のような日周期性は示さなかったが, この原因は不明である。<BR>両個体の活動において温度, 照度などの微気象との関連性は特に認められなかった。<BR>採餌中は一定地に留まることはないと言われて来たが周囲に異常がない限り同位置にて採食しつづけた。<BR>人, 犬などの足音および枯葉などを踏む音に対しては異常な警戒を示したが, 自動車, 人声などの騒音に対しては特に警戒を示さなかった。<BR>1回の閉眼時間は1~3分程で1日のトータルにおいても20分程度と非常にわずかであった。<BR>毛づくろい洗顔行動は朝方および夕方の活動の開始と終了の前後に数多く観察された。