著者
櫻井 三紀夫
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.27-32, 1991-02-25 (Released:2011-02-09)
参考文献数
2

地球規模で進行している砂漠化を抑制し, 砂漠の緑地化を促進するための大規模潅漑システムとして, 内陸砂漠地帯に人工海水湖を形成しその周辺に海水淡水化設備を設置して灌漑・緑地化を行う方式を提唱する。人工海水湖を形成する理由は, 海水淡水化して, 内陸に供給する方式に比べて次の点で有利だからである。(1) 淡水化設備や蒸留用熱エネルギーに投資する前に, 早期に低コストで内陸に水を送れる。(2) 内陸での自然蒸発により海水湖周辺の湿潤化, 雨量の増加が期待でき, 淡水化設備の建設よりも早いペースで淡水総量を増大できる。(3) 淡水化設備を利用価値の低い砂漠地帯に置くことにより, 海岸部の高価値地域の占拠面積を縮少できる。このような考え方に基づき砂漠灌漑システムの基本構想を検討し, 次の事項を明確化した。(1) 人工海水湖は盆地状岩盤地帯に形成すべきこと, (2) 海水湖形成過程での自然蒸発促進のため水路方式あるいは広域散水方式の採用が望ましいこと, (3) 500km2 (琵琶湖程度) の湖水域に年降雨量500mm相当の海水を供給し, 50km2の緑化地帯に年降雨量1000mm相当の淡水を供給するシステムの仕様を試算した結果, 構成単位システムとして実現性ありと判断された。