著者
櫻井 光行
雑誌
嘉悦大学研究論集
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.1-19, 2016-10-26

本稿は、ブランドの役割を製品の物理的特性を超えた付加価値の提供と捉えるならば、日本の優良ブランドの多くはブランドと言えるのだろうかという問題意識から出発している。日本企業が成長を図るためには、製品のコモディティ化からの脱却、持続的競争優位の構築・維持、関係性マーケティングの推進を通じて、消費者にとって象徴的な意味を提供するブランドが不可欠である。 そのようなブランドの形成要因は機能的な特徴よりも消費体験にあると考えられる。意味を持つブランドとは、消費者の記憶の中でブランド・スキーマと自己スキーマが結びついたブランドであり、どのような体験がその結びつきを強めるのかを考察した。認知心理学や消費文化論のレビューを通じて、ブランド形成要因解明のための3つの視角が導出された。ブランドと自己の結びつきは、①ライフ・ヒストリー(特に若年期)において自己スキーマに関わる精緻化や強い感情を伴う経験を通じて形成される、②準拠集団によってブランドの意味がつくられ、自己動機を媒介として形成される、③社会的に共有された意味(消費者は受動的)と個人の経験からつくられる意味(能動的)の2つから生まれる。