著者
櫻井 慶一
出版者
文教大学
雑誌
生活科学研究 = Bulletin of Living Science (ISSN:02852454)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.31-41, 2016-03-30

近年、保育所等で発達や生育環境に課題を抱えた児童(家庭)に対して、きめ細かな個別的および集団的配慮や、地域の専門機関等との連携による「保育ソーシャルワーク」の必要性が関係者から叫ばれている。そうした背景には障害者権利条約の批准に合わせた「インクールーシブ」な社会づくりがわが国でもようやく課題になってきていることもある。2013 年11 月にはそうした一環として「日本保育ソーシャルワーク学会」も発足し、2016 年度からは同学会による現職保育士等を対象とした「保育ソーシャルワーカー」の養成研修も開始されようとしている。しかし、「保育ソーシャルワーク」はまだその定義はもとより概念も明確ではない。本稿では、その定義や必要性、「保育ソーシャルワーカー」に求められる専門性や養成体系等について、いわゆる「気になる子」対応を中心に検討した。その結論として、「保育ソーシャルワーカー」には保育士等の現場職員が適任であり、各園単位で置かれることが最も望ましいと考えた。そのための現職の保育士等への研修・養成が急がれている。