著者
櫻井 直子 奥村 三菜子
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.178, pp.154-169, 2021-04-25 (Released:2023-04-26)
参考文献数
7

Common European Framework of Reference for Languages: Learning, teaching, assessment Companion Volume with New Descriptors(CEFR-CV)が2018年に欧州評議会から公開された。そこでは,仲介の概念が2001年のCEFRより幅広い観点から示され,取り上げる活動範囲の拡大と,それに沿った新たなグリッドの加筆が行われている。本稿では,まず,CEFR-CVの「仲介(mediation)」に関する先行研究から,仲介が受容・産出・相互行為を結びつけ学習と社会の橋渡しをする活動であることを確認し,次に,CEFR-CVの「仲介」の例示的能力記述文の形態素解析を行いA1~C2の仲介者像を描き出した。最後に,CEFR-CVが示す「仲介」が,日本語教育の実践において,学習段階に応じたアフォーダンスの創出,および,協働的な活動の促進に貢献するものであることを示した。
著者
櫻井 直子
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.178, pp.51-65, 2021-04-25 (Released:2023-04-26)
参考文献数
19

ヨーロッパでは,各国がその国の言語教育政策に沿って日本語教育を実践している。したがって,ヨーロッパにおいて日本語教育がこれまでに構築してきたことを整理するには,ヨーロッパ各国をつなぐ横軸となる視点が必要である。そこで本稿では,2001 年にヨーロッパ評議会が公開したCommon European Framework of Reference for Languages: Learning, teaching, assessment(以降,CEFR)を横軸に据える。まず,横軸となるCEFRの理念と言語教育観を概括する。次に,ヨーロッパにおける日本語教育ではどのようにCEFR が受容され,日本語教育の実践に参照されることで浸透していったのかを,公的機関の動向と日本語教師の実践からまとめる。最後に,CEFR の浸透が日本語教育にもたらした意義と,今後の日本語教育へ示唆する点を2020 年に出版されたCEFR 補遺版も絡め考察する。