著者
櫻木 淳一
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.175-186, 2013-12-25 (Released:2014-10-31)
参考文献数
26

後天性免疫不全症候群(AIDS)の病原体としてヒト免疫不全ウイルス(HIV)が発見されてから30年が過ぎた.その間,地球規模の脅威であるこの疾患に関して精力的な研究が全世界で遂行され,たくさんの成果が疾患との戦いの重要な糧となってきた.感染者に対する治療法は日々進化し続けており,もはやAIDSは死の病ではなく,慢性疾患であると言われるまでに状況は改善されてきている.しかしウイルスそのものに目を向けると一見明白となったかのように映る複製のストーリーにはいくつもの穴が開いており,根本的な理解には遠く及ばないのが現状である.本稿では特にHIVの主役をゲノム核酸と捉え,最新の知見を交えながらウイルス複製の何がわかり何がわかっていないのかをその様々なステップについて紹介する.