著者
櫻田 歩夢 西山 浩司 清野 聡子
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.137-155, 2020 (Released:2021-02-24)
参考文献数
30

本研究では,平成29年 7 月九州北部豪雨の被害を受けた福岡県東峰村とその隣接地域に立地 する水神を対象に,その立地特性を把握し,現地住民に対するヒアリング調査,災害に関する歴史文献調査を通して,水神と災害との関連性を調査した。その結果,約8割の水神が,土石流を含む渓流の氾濫が起こりやすい場所に立地していることがわかった。また,ヒアリングから得られた4つの水神は災害,または,農業に関連して祀られており,桑鶴地区と葛生地区の水神は,台山の土石流と大肥川の氾濫から地域を守るために祀られていることがわかった。急峻な谷筋を持つ台山では,歴史的に何度も土石流災害が発生してきたと推定できるため,災害の危険性を訴える大切なメッセージが,大蛇の言い伝えとなって桑鶴地区に伝わったと考えられる。以上の結果から桑鶴地区の水神が持つ防災上のメッセージの内容について考察すると,大蛇の言い伝えを介して語り継がれた,繰り返し起こる台山の土石流災害の特徴を水神のメッセージに含ませることによって,水神が台山に繋がる地域の災害の危険性を意識付ける役割と その危険性を後世に伝える役割を持つようになり,地域の防災モニュメントとして水神を活用することができるようになると期待される。