著者
正岡 淑邦 高野 信雄
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.p110-116, 1985-04

暖地型飼料作物の細胞壁消化率をセルラーゼを用いて測定し,消化率と細胞壁中の化学成分含有率の関係について草種間で比較した。供試草種はトウモロコシ,ソルガム,グリーンパニック,バヒアグラス,オオクサキビ,シコクビエ,ローズグラスであり,トウモロコシとソルガムは2回,他は3回,生育時朝をかえて刈取った。1)生育相が比較的若い場合でも細胞壁構成物質(CWC)の含有率が高いとCWC消化率(CWCD)やin vitro乾物消化率(IVDMD)が低く,生育相が進んだ場合でもCWC含有率が低いとCWCDやIVDMDは高い値を示した。2)オオクサキビのCWCDは調査朝間を通じて他の草種より高く,逆にローズグラスは低い値を示した。3)CWC中のリグニン含有率は生育がすすむといずれの草種も増加し,CWCDは低下する傾向を示した。但しその増加率又は低下率は草種によって異なった。CWC中のリグニン含有率の増加はオオクサキビが最高の52.9%を示した。一方,最低はバヒアグラスの1.2%でほとんど変化しなかった。4)CWCDの草種間差異はリグニン含有率が近似した材料間でも認められ,必ずしもリグニン含有率に影響されなかった。またCWC中のリグニン以外の成立であるヘミセルロース又はセルロースの各含有率とも関連性が明らかでなかった。以上より,暖地型飼料作物のCWCDに関する草種間差異は細胞壁諸成分の含有率とは異なる要因が影響すると考えられる。