著者
萬田 富治 高野 信雄
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.318-323, 1980

マメ科牧草サイレージの発酵程度および発酵品質とエストロジェン活性の関係を明らかにするために,開花期に刈取った1番草のラジノクローバ,アカクローバ,アルファルファの3草種を用いて,予乾,高水分,蟻酸0.6%添加サイレージを,それぞれ15℃と30℃の貯蔵温度で調製した。原料草とサイレージは凍結乾燥後,粉砕し乾物量で30%ずつ基礎飼料に混ぜて,23日令の去勢マウスに6日間与え,子宮重量反応法によってエストロジェン活性を測定した。ラジノクローバとアカクローバサイレージのエストロジェン活性はいずれの調製条件下でも変化しなかった。サイレージ発酵によってエストロジェン活性が増加したアルファルファサイレージは,15℃と30℃で貯蔵した高水分サイレージと30℃で貯蔵した予乾サイレージの3種類で,高水分サイレージの活性の増加率は15℃貯蔵よりも30℃貯蔵のほうが高かった。15℃と30℃で貯蔵した蟻酸添加サイレージと,15℃で貯蔵した予乾サイレージの発酵程度は低く,エストロジェン活性も原料草と差がなかった。アルファルファの予乾,高水分,蟻酸添加の各サイレージのエストロジェン活性をdiethylstilbestrol (DES)の力価に換算して表わすと,乾物100gあたり原料草が1.42μgであったのに対し,15℃貯蔵では1.44,1.81,1.56μg,30℃貯蔵では1.92,2.67,1.39μgを示し,アルファルファでは発酵程度の高いサイレージほどエストロジェン活性が増加することが明らかにされた。
著者
正岡 淑邦 高野 信雄
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.p110-116, 1985-04

暖地型飼料作物の細胞壁消化率をセルラーゼを用いて測定し,消化率と細胞壁中の化学成分含有率の関係について草種間で比較した。供試草種はトウモロコシ,ソルガム,グリーンパニック,バヒアグラス,オオクサキビ,シコクビエ,ローズグラスであり,トウモロコシとソルガムは2回,他は3回,生育時朝をかえて刈取った。1)生育相が比較的若い場合でも細胞壁構成物質(CWC)の含有率が高いとCWC消化率(CWCD)やin vitro乾物消化率(IVDMD)が低く,生育相が進んだ場合でもCWC含有率が低いとCWCDやIVDMDは高い値を示した。2)オオクサキビのCWCDは調査朝間を通じて他の草種より高く,逆にローズグラスは低い値を示した。3)CWC中のリグニン含有率は生育がすすむといずれの草種も増加し,CWCDは低下する傾向を示した。但しその増加率又は低下率は草種によって異なった。CWC中のリグニン含有率の増加はオオクサキビが最高の52.9%を示した。一方,最低はバヒアグラスの1.2%でほとんど変化しなかった。4)CWCDの草種間差異はリグニン含有率が近似した材料間でも認められ,必ずしもリグニン含有率に影響されなかった。またCWC中のリグニン以外の成立であるヘミセルロース又はセルロースの各含有率とも関連性が明らかでなかった。以上より,暖地型飼料作物のCWCDに関する草種間差異は細胞壁諸成分の含有率とは異なる要因が影響すると考えられる。
著者
三股 正年 高野 信雄 山下 良弘 宮下 昭光
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.187-197, 1967-02

1)蹄耕法による草地造成の適用性を明らかにするため,長草型野草地で慣行機械処理による造成草地と対比しながら3カ年試験を行なった。2)造成時における播種牧草の定着数は蹄耕区では114本/m^2(イネ科草78,マメ科草36)であったが,ストッキングを行なわない場合には51本/m^2と1/2以下であった。デスクハローにより播種床を造成した地表処理区は242本/m^2であった。3)蹄耕区,地表処理区ともに初年目2回,2年目5回,3年目6回草生に応じて利用率65%程度の放牧を行なった。これらの結果は2年目の第1回の放牧時には蹄耕区83.7%の牧草率(マメ科草率54.3%)を示して良好な草生となり,地表処理区とほぼ同様な良好な草地造成が達成された。4)3カ年間の牧養力では,自然区はha当り採食利用草量36.6トンで693頭の放牧がなされた。蹄耕区は107.5トンの利用草量で1,642頭,地表処理区で117.4トンの草量と1,817頭の放牧ができた。5)刈取り法による3カ年平均の1日1頭(体重500kg換算)の採食栄養量は自然区でDM 12.4,DCP 1.56,TDN 8.41各kgであり,蹄耕区ではDM 9.2,DCP 1.91,TDN 6.97各kgであった。地表処理区ではDM 7.6,DCP 1.89,TDN 6.06kgであった。6)蹄耕法による草地造成は,火入れ後に燐酸を主体とする施肥と地表播種を行ない,ha当り延70頭(体重500kg換算牛)のストッキングによって牧草種子の土壌への密着を図る。その後は草生に応じた放牧利用によって良好な草地の造成が可能であることが立証された。7)蹄耕造成法において,今後はストッキングの時期,ストッキング後の第1回放牧のタイミング,ストッキングの強さ,施肥量などについて検討する必要がある。
著者
鈴木 慎二郎 高野 信雄 山下 良弘
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.103-113, 1972-07-25

1)8回の輪換の平均草量は重,中,軽放牧それぞれ631,970,1251kg/10aで,利用率は72.9,56.8,46.6%であった。成分的には重放牧の草が栄養価高く,また放牧後の草はDCPで2.6〜4.2%,TDNで2.7〜3.8%低下した。草の栄養価は夏に低下し,この時期に育成牛の発育も停滞した。草種についてはオーチャードグラスの割合は軽放牧で高く維持され,重放牧ではペレニアルライグラスが増加した。2)期間中における育成牛の平均日増体は重,中,軽放牧それぞれ,434,653,617g,採食量は乾物で体重の1.94,2.02,2.48%であったが,これは季節がすすむに従い低下した。3)重放牧と中放牧では採食時間が長くなったが,採食量と発育からみて,重放牧の場合は草量不足を補うには不十分であった。一方,草量が一定限度以下になると採食時間は再び短くなり,また草量が1番少ない滞牧最終日においても採食時間は短くなった。放牧強度の影響は反芻に強くあらわれ,重放牧の反芻時間は軽放牧の半分程度であった。行動の季節的変化も大きく,夏,秋では採食時間が増え,反芻時間が激減した。また季節が同じであれば放牧強度が異なっても似たような行動パターンがみられた。採食時間には1日に3回のピークがみられたが,毎回の移牧時刻である9時以降の採食が盛んであった。1日18mm程度の降雨では横臥の割合が著るしく減ったが,行動の基本形には影響なかった。4)体重は朝から夕方まで増加するが,その最大値はいずれも滞牧1日目にあらわれ,その後最終日まで減少する。従って期間中の増体重は1日毎ではなく,輪換毎の増体重の積算として示された。体重の時刻変化からは,滞牧1日目における採食量が2日目以降にくらべて著るしく多いこと,また採食のピークは量的にみると9時〜12時の間の1回だけであると言える。以上の行動と体重変化の結果から,牛は輪換の周期だけではなく,移牧の時刻も学習したのではないかと考えられた。5)期間中の増体重と反芻時間との間には正の相関がみられたが,採食時間とはむしろ負の相関であった。また飲水回数は採食時間との間には正,増体重との間には負の相関を有した。