著者
吉永 真訓 正木 征樹 土肥野 利幸
出版者
横浜植物防疫所
雑誌
植物防疫所調査研究報告 (ISSN:03870707)
巻号頁・発行日
no.45, pp.41-47, 2009-03

ミカンコミバエBactrocera dorsalis卵をサイズ又は品種の異なるマンゴウ生果実に寄生させて蒸熱処理を行い、サイズ又は品種の違いが殺虫効果に及ぼす影響について調査した。1) 殺虫効果に及ぼすサイズの影響を調べるため、カラバオ種マンゴウのS、M、Lサイズにミカンコミバエの卵を寄生させ、果実中心温度が44.0、45.0、45.5、46.0、46.5、47.0℃になるまで蒸熱処理(庫内温度49.0℃、相対湿度95%設定)し、殺虫率をサイズ間で比較した。その結果、各目標温度に達した時点での殺虫率はサイズによって異なり、大きいサイズの果実ほど殺虫率は高くなることが示された。大きい果実ほど中心部の温度上昇は緩やかで、その分だけ高温にさらされる時間が長くなることから、このことが原因したものと考えられた。2) 次に、殺虫効果に及ぼす品種の影響を調べるため、2品種マンゴウ(ケンジントン種、トミーアトキンス種)にミカンコミバエ卵を寄生させ、前述の条件で蒸熱処理して、得られた殺虫率を品種間で比較した。処理に際しては品種間でサイズに差が出ないように配慮した。プロビット解析の結果、トミーアトキンス種に寄生させた卵が有意に殺虫されやすいことが示され(LT90、LT95)、品種の違いが殺虫率に影響していることが明らかとなった。ただ100%殺虫が得られた処理条件はいずれの品種でも46.5℃以上と変わらず、完全殺虫条件に近い厳しい処理条件下では品種の違いの影響は少なくなるものと考えられた。なお、2品種間で果実の温度上昇速度はほとんど違わず、殺虫効果を左右する要因として、温度上昇速度以外の要因が品種間で存在する可能性が示唆された。