著者
福田 陽一 沢多 美和 鷲塚 昌隆 東野 雷太 福田 義久 田中 芳明 武井 峰男
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.114, no.4, pp.233-238, 1999-10-01
参考文献数
12
被引用文献数
3

ウシ肝臓水解物のラット肝再生に対する作用について70%部分肝切除モデルを用いて検討した.肝臓水解物は肝切除24時間後の肝重量を用量依存的に増加させ, その効果は, 0.5g/kg, p. o. の用量から有意であった.細胞増殖の指標として, 肝オルニチンデカルボキシラーゼ (ODC) 活性およびproliferating cell nuclear antigen (PCNA) labeling indexについて検討した.肝臓水解物は肝切除4時間および24時間後の肝細胞質中の0DC活性を有意に上昇させた.また, 肝切除24時間後のPCNA labeling indexを用量依存的に上昇させ, その効果は0.5g/kgの用量から有意であった.以上の結果から, 肝臓水解物は肝再生促進作用を有すことが示唆された.
著者
松永 勇吾 田中 貴男 齋藤 洋一 加藤 博樹 武井 峰男
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.143, no.2, pp.84-94, 2014 (Released:2014-02-10)
参考文献数
43
被引用文献数
1 1

アコチアミド塩酸塩水和物(アコファイド®錠,以下,アコチアミド)は,機能性ディスペプシア(FD)の治療薬として,ゼリア新薬工業株式会社で創製されたアセチルコリンエステラーゼ(以下,AChE)阻害薬である.FDは胃十二指腸領域から発せられる食後のもたれ感,早期満腹感,心窩部痛または心窩部灼熱感などの症状を呈するが,それらの症状の原因となりそうな器質的病変が認められない機能性消化管障害である.症状の発症要因の一つとして,FD患者において胃前庭部の運動の低下や胃排出の遅延が認められていることから,症状の改善には消化管運動を亢進させ,機能を改善させることが有用であると考えられる.アコチアミドはAChE阻害作用を有し,イヌおよびラットにおいて胃運動亢進作用を示し,さらに,アドレナリンα2受容体作動薬であるクロニジンによって惹起させた胃運動低下モデルおよび胃排出遅延モデルなどの消化管機能低下に対して改善効果を示した.臨床第II相試験において,FD患者を対象にアコチアミドの有効性を検討した結果,主要評価項目である最終調査時点の被験者の印象では本剤1回100 mg群はプラセボ群,50 mg群および300 mg群より改善率が高かった.このため,本剤1回100 mg(1日3回)を臨床推奨用量とし,臨床第III相試験で食後の膨満感,上腹部膨満感および早期満腹感の症状を有するFD患者を対象に有効性を検討した.主要評価項目である被験者の印象の改善率および3症状(食後の膨満感,上腹部膨満感および早期満腹感)消失率共に100 mg群でプラセボ群より有意に高い値を示した.よって,本剤1回100 mg 1日3回投与でのFDに対する有効性が確認された.また,本剤休薬後も改善効果が維持されることが示唆された.さらに,長期投与試験において本剤休薬後に症状の再燃が認められた場合でも,耐性を形成させることなく,服薬を再開することで再度の改善が得られると考えられた.以上のことから,アコチアミドはFD患者の食後膨満感,上腹部膨満感,早期満腹感などの諸症状に対して改善効果を示す薬剤であり,FDの治療薬として有用な薬剤になると期待される.