著者
李 有姫 武井 明日香 岡田 雅 上田 晃一
出版者
一般社団法人 日本創傷外科学会
雑誌
創傷 (ISSN:1884880X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.115-120, 2020 (Released:2020-07-01)
参考文献数
11

リストカットによる瘢痕は,度重なる受傷により広範囲の瘢痕となる。精神安定後も,瘢痕に対する社会的なマイナスイメージのために精神的苦痛が継続するため治療が望ましい。色調や質感の再現のために隣接組織による再建が望ましく,ティッシュ・エキスパンダー(以下TEとする)は手術法の選択肢の一つと考えられる。上肢の皮膚伸展は困難であるが,われわれの考案したラムダ切開を用いることで伸展皮膚を効率的に展開でき,最大限に利用することができる。そこで当科で治療したリストカット後瘢痕の5症例,6部位について検討した。筋膜上にTEを挿入し,全症例に1~4ヵ所のラムダ切開を加えた。TE挿入による合併症として血腫,TEの破損・露出・移動などを認めたが,ラムダ切開を加えたことによる血流障害等の合併症は認めなかった。TEで治療した傷は術後広がりやすい印象であり,十分なfull expansionの期間が必要であると考える。