著者
斉藤 雅茂 冷水 豊 山口 麻衣 武居 幸子
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.110-122, 2009-05
被引用文献数
3

本研究では,社会的孤立に関する操作的基準を設け,ひとり暮らし高齢者に占める孤立状態の発現率とその基本的特徴を記述的に分析した.調査は,東京都板橋区のひとり暮らし高齢者3,500人を対象にし,名目ひとり暮らし世帯を除いた2,907人から1,391人(47.9%)の有効回答が得られた.回答者には,家族や親戚,友人,近所の人を含めて,会って話したり,電話や手紙のやりとりをしている「親しい人」を最大10人まで挙げてもらい,その1人ひとりについて対面接触頻度と非対面接触頻度をたずねた.そのうえで,親しい人が1人もいない状態を「極端な孤立」,1人以上いてもその人々との対面接触および非対面接触頻度が少ない状態を「ほとんど孤立」に分類した.この結果,(1)ひとり暮らし高齢者のうち,10.8〜16.6%が孤立状態(極端な孤立+ほとんど孤立)に該当すること,(2)孤立状態にある高齢者には,男性の比率が高く,また男性であっても女性であっても未婚の人,子どものいない人,収入の少ない人が多いこと,(3)孤立状態の高齢者のうち,約8〜9割の人は緊急時や日常の軽微な支実援を頼める人が1人もいないことが示された.