著者
鈴木 雅一 武居 有恒 福嶌 義宏
出版者
社団法人 砂防学会
雑誌
砂防学会誌 (ISSN:02868385)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.4-13, 1988
被引用文献数
5

芝生地の森林地に対する水文特性の相違を調べるために,滋賀県東南部のゴルフ場を対象として,1年間の水文観測が実施された。対象地は同一流域の上流側がアカマツ・ヒノキを主とする林地,下流側が芝生を主とするゴルフ場である。流域面積は上流観測点で23.7ha,下流観測点で77.5haであり,芝生地面積は53.8haとなる。森林地区,芝生地区の地質はそれぞれ,粗粒花崗岩,第三紀古琵琶湖層群であり,平均斜面傾斜は,それぞれ21.7°,4.12°である。年水収支の検討により,森林地区と芝生地区の年蒸発散量は836.2mm,536.7mmと見積られた。芝生地区の年蒸発散量は森林地区に較べて約300mm少ない結果である。つぎに,両地区の流出特性を定量的に評価するために,観測された日・時間・20分記録に対して,「水循環モデル」が適用された。なお,月蒸発・蒸散量の推定には,日本各地域の短期水収支を根拠とする「蒸発散推定モデル」が使われた。森林地区に対する芝生地区の流出の顕著な特徴は,降雨のほとんど大部分が直接流出となるために基底流出成分が少なく,その結果ハイドログラフの変動が激しくなる点である。