著者
武村 美和
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.148, pp.129-142, 2011 (Released:2017-02-17)
参考文献数
22

本稿では,日本語の授受本動詞の持つ特徴である視点制約と方向性に着目し,これらの要因が学習レベル上位群と下位群の中国人日本語学習者の授受本動詞文理解にどのように影響するのかについて絵と文のマッチング課題を用いた実験で検討した。その結果,学習者は視覚呈示されたイラストと授受の方向性が合致しない文は比較的正しく判断できるが,授受動詞文の視点制約に違反した文には誤った判断を行う傾向があり,方向性が合致しているか否かに頼って授受動詞文の正誤判断を行っていることが示された。また,レベルの上昇とともに方向性が合致しない文は正しく判断できるようになるが,視点制約に違反した文を正しく判断することはレベル上位群でも難しいことが分かった。したがって,授受動詞を含む文理解における困難の主要な原因が視点制約にある可能性が示唆された。