著者
武田 八郎
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
no.129, pp.117-122, 1996-03
被引用文献数
3

わが国における紙パルプ産業の海外造林は1970年代の東南アジア,大洋州諸国での試験造林事業をはじめ,ブラジル・紙パルプ資源開発プロジェクト,本州製紙のパプアニューギニアでの造林事業などがあげられるが,石油危機を契機に海外造林はしばらく停滞していた。しかし'80年の「チップショック」により紙パルプ産業は原料確保先の分散化や多角化を図るとともに,海外造林を中核とした製紙原料の開発輸入を進めることになった。とりわけ1980年代半ば以降の円高進行や1990年代に入っての地球環境問題などを背景に,紙パルプ資本の海外造林投資が相次いでいる。これらは安価な製紙原料となる短伐期型のユーカリ造林であるところに共通性があり,また進出先もタイ,ベトナム,チリ,ニュージーランド,オーストラリアといった環太平洋諸国に広がっている。これは紙パルプ産業による長期的な原料確保を補完するための新たな海外進出に他ならない。