著者
武田 祐樹 坂口 嘉之 田中 弘美
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.132-143, 2008 (Released:2009-01-14)
参考文献数
18
被引用文献数
2 1

織物の異方性反射特性を表現するためには,任意の入射方向の入射光に対する任意の視方向への反射光の比率を表す双方向反射分布関数(BRDF) が必要である.本論文では,光沢のあるシルクライク織物を対象とし,繊維の断面形状と織構造の違いにより織物の光沢感に相違が現れることに着眼し,入射方向を固定し反射光の分布を多視点観測した,少数視点画像に基づいた効率的なBRDF の自動生成法を提案する.まず,無彩色(黒色)の織物表面に対し入射方向を鉛直方向に固定し,織構造の直交二軸性に基づいて選択された1/8 球の視点範囲内で,少数の多視点画像を獲得し鏡面反射光の分布を観測する.獲得した観測画像データを用いて基準異方性反射分布と呼ぶ基準鏡面反射モデルを生成する.次に,入射方向を変化させた場合の基準異方性反射分布の変化を多視点から観測し,獲得した多視点画像から,光の反射と屈折を表すフレネル効果を考慮した反射光解析により,直交二軸性の異方性反射特性を抽出する.得られた特性に基づき,基準異方性反射分布から高精度のBRDF を生成する.生成したBRDF を用いて異方性反射レンダリングを実現し,同素材の任意に彩色されたドレス着装シミュレーション実験結果から提案手法の有効性を確認する.