著者
大濱 俊彦 金城 一志 知念 希和 曽爾 浩太郎 武田 英希 諸見里 拓宏 張 同輝 宮平 健
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.255-258, 2009-03-30 (Released:2010-03-01)
参考文献数
12

みかん缶詰・アイスクリームの大量摂取により,清涼飲料水ケトーシスと同様の病態を来たした症例を経験したので報告する.症例は40歳のメタボリックシンドロームを有する男性.上気道感染罹患後,食欲低下からみかん缶詰などを多量に摂取していた.口渇,多尿の症状が強くなり,2週間で10 kgの体重減少を認め,全身倦怠感が強くなったため外来受診した.受診時,血糖1,150 mg/dlと著明な高血糖とケトーシスを呈していた.初期のインスリン治療に対する反応は非常によく,糖毒性が取れるとともに血糖コントロールも著明に改善し,入院時低下していた内因性インスリン分泌能も改善してきた.現在経口糖尿病薬でコントロール良好である.来院時,糖尿病性ケトアシドーシスとの鑑別を要したが,病歴,治療への反応性等から清涼飲料水ケトーシスと同様の病態と判断した.メタボリックシンドロームの増加に伴いインスリン抵抗性を持った人が増えており,本症例のように清涼飲料水ケトーシスあるいは清涼飲料水ケトーシスと同様の病態を来たす症例は今後も増加すると思われる.そのため,高血糖,ケトアシドーシスで発症した若年の糖尿病患者を診た場合に1型糖尿病の糖尿病性ケトアシドーシスと同時に清涼飲料水ケトーシスも鑑別に入れないといけないと思われる.その際,詳細な病歴聴取により,インスリン抵抗性の存在,日常的な清涼飲料水あるいはその他の糖分など(本症例ではみかん缶詰やアイスクリーム)の大量摂取の食事歴を明らかにすることが重要である.本症例は長期間の清涼飲料水の多飲歴がなく,清涼飲料水ケトーシスの典型例ではなかった.清涼飲料水ケトーシスの発症にフルクトース負荷が関与するとの報告もあり,フルクトースを含むみかん缶詰がケトーシス発症に影響を及ぼした可能性があると思われた.本症例のように清涼飲料水に限らずそれ以外の糖分の急激な大量摂取も清涼飲料水ケトーシスと同様の病態を呈するので注意を要する.