著者
武田,敏秀
出版者
園藝學會
雑誌
園藝學會雜誌
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, 1998-01-15

アンズの系統分類にRAPD分析法を適用した.DNA多型を効率的に検出するために, 5種類の代表的な品種を供試して, 225種類のオペロンプライマーについてスクリーニングを行い, 各系統間で複数のDNA多型を示す有効な18種類のプライマーを選抜した.次にこれらのプライマーを用いてアンズ33品種・系統と近縁の野生2種の分類を試み, 検出されたRAPDsをもとにクラスター分析と数量化理論第三類を用いてデータの解析を行った.その結果, 本実験で供試したアンズ(Prunus armeniaca)の品種・系統は中国西部からヨーロッパにかけて分布する"西方品種群"(A)と中国東部, 日本などに分布する"東方品種群"(B)の2群に大別された.しかしながら, 近縁野生種のP. sibiricaとP. brigantina, 中国の西部から北部に分布し, 諸特性が不明である'白杏', およびスモモとアンズの自然交雑種とされる'仁杏'はこれらの群に属さなかった.また, 中国の品種はA群およびB群の両方に属し, 遺伝的変異が大きいことから日本アンズ, ヨーロッパアンズの祖先種である可能性が高いと推察した.