著者
勝川,健三
出版者
園藝學會
雑誌
園藝學會雜誌
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, 1999-07-15

Nerine 7種を用いた24通りの種間交雑組み合わせのうち, 12組み合わせで植物体を得ることができた.Nerine 3種を種子親に用い, 数種のヒガンバナ科植物を花粉親にして交雑を行ったところ, 19の交雑組み合わせのうち6組み合わせで植物体を得ることができた.
著者
土師,岳
出版者
園藝學會
雑誌
園藝學會雜誌
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, 2001-07-15

モモの溶質品種'白鳳', 不溶質品種'アーリーゴールド', および硬肉品種'有明'を供試し, 収穫後における果肉硬度とエチレン生成量の推移を調査した.溶質品種と不溶質品種では程度の違いはあるものの, 果肉硬度の低下とエチレン生成量の増加が認められるのに対して, 硬肉品種では果肉硬度の低下とエチレン生成が認められず, 溶質および不溶質品種とは明確に異なる成熟特性を示すことが明らかになった.このように硬肉品種はエチレン生成に関する変異体であり, 生食用モモ品種の日持ち性向上育種を進める上で有用な形質と考えられる.
著者
武田,敏秀
出版者
園藝學會
雑誌
園藝學會雜誌
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, 1998-01-15

アンズの系統分類にRAPD分析法を適用した.DNA多型を効率的に検出するために, 5種類の代表的な品種を供試して, 225種類のオペロンプライマーについてスクリーニングを行い, 各系統間で複数のDNA多型を示す有効な18種類のプライマーを選抜した.次にこれらのプライマーを用いてアンズ33品種・系統と近縁の野生2種の分類を試み, 検出されたRAPDsをもとにクラスター分析と数量化理論第三類を用いてデータの解析を行った.その結果, 本実験で供試したアンズ(Prunus armeniaca)の品種・系統は中国西部からヨーロッパにかけて分布する"西方品種群"(A)と中国東部, 日本などに分布する"東方品種群"(B)の2群に大別された.しかしながら, 近縁野生種のP. sibiricaとP. brigantina, 中国の西部から北部に分布し, 諸特性が不明である'白杏', およびスモモとアンズの自然交雑種とされる'仁杏'はこれらの群に属さなかった.また, 中国の品種はA群およびB群の両方に属し, 遺伝的変異が大きいことから日本アンズ, ヨーロッパアンズの祖先種である可能性が高いと推察した.
著者
入船 浩平 森本 裕介 内浜 正美
出版者
園藝學會
雑誌
園藝學會雜誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.72, no.6, pp.511-516, 2003
参考文献数
22
被引用文献数
9

シンテッポウユリ鱗茎由来のカルスを用いて,パーティクルガン法により遺伝子導入を行った.プラスミドPAct1-F(イネ由来アクチン1遺伝子プロモーターにβ-glucuronidase(uidA遺伝子)をもつ)を導入しGUS発現により導入条件の至適化を行った.この至適条件に基づきカルスヘプラスミドpDM302 (イネ由来アクチン1遺伝子プロモーターにPhosphinothricin acetyltransferase (PAT)(bar遺伝子)をもつ)を導入し,ビアラフォスによる耐性カルスの選抜をおこなった.得られた耐性カルスを再分化に導き,遺伝子導入約6か月後に耐性株165株を得た.この耐性株から67株についてDNAを抽出しPCRに供した.その結果,導入遺伝子を持つ株が15株において確認された.さらにこの内,3株を用いて導入遺伝子のPAT活性による除草剤耐性試験を行った.
著者
工藤 暢宏 新美 芳二
出版者
園藝學會
雑誌
園藝學會雜誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.428-439, 1999-03-15
参考文献数
16
被引用文献数
6 13

アメリカノリノキ(Hydrangea arborescens)の有する不良環境適応性を'セイヨウアジサイ'(H. macrophylla)に導入することを目的として, 両種間で正逆交雑を行った.1. H. macrophyllaとH. arborescensの花粉を塩化カルシウムとともに管ビンに入れ, -20, 5および20℃の温度条件で貯蔵し, その後の花粉発芽能力を経時的に調査した.-20℃で貯蔵した花粉の発芽能力は長期間(10∿12か月間)維持されたが, 5℃で貯蔵した花粉は, 5ヶ月で, 20℃で貯蔵した花粉は5日でそれぞれ発芽能力を失った.2. 自家, 種内および種間交配ではどの組合せでも両種の花粉は柱頭上で良く発芽し, 花粉管は花柱内を伸長して子房内の胚珠に達した.3. 自家および種内交配では, 両種とも完熟種子が得られた.しかし, 得られた完熟種子数は品種や組み合わせで異なり, さく果当たり種子数は, H. macrophyllaでは10∿54粒, H. arborescensでは19∿38粒であった.4. 得られた種子をポットと無菌培地に播くと, いずれの場合でも, H. macrophyllaでは58∿85%の発芽率であり, H. arborescensの発芽率は, 14∿52%の範囲であった.H. arborescensの実生の第一本葉には毛茸の発生があり, これが両種の実生を区別する形態的特徴であった.5. 種間交配では, 種子親にH. macrophyllaを用いた場合, わずかに種子が得られ, H. arborescensの場合, 種子が得られなかった.得られた種子を人工培地に無菌播種した結果, 実生が得られた.しかし, これらは幼植物期にすべて枯死した.6. H. macrophyllaを種子親にした種間交配では交配60∿150日後の胚珠を培養して実生が得られたが, 子葉展開後生育を停止しすべて幼植物期に枯死した.一方, H. arborescensを種子親とした種間交配では交配60日後の胚珠を培養して1個体の実生を得たが, 子葉展開直後に枯死した.7. H. macrophylla×H. arborescensで胚珠培養により得た実生の子葉に形成された不定芽を切り取り, BA添加培地で継代した結果, 根系をもつ植物体が得られた.その茎頂部に花粉親のH. arborescensに特有の毛茸が発生したため, 雑種植物であると判断した.再分化植物は生育が緩慢で試験管外では生育しなかった.
著者
太田 勝巳 森下 進也 須田 浩平 小林 伸雄 細木 高志
出版者
園藝學會
雑誌
園藝學會雜誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.66-68, 2004-01-15
参考文献数
10
被引用文献数
1 34

8種の花卉(トレニア,エキザカム,ベゴニア,グロキシニア,ロベリア,ミムラス,カルセオラリアおよびカンパニュラ)において1.0%キトサンの土壌混和処理および水溶性無機肥料(1.0%キトサンと同量の窒素量となるよう施用)の施与を行い,栽培試験により成長量と開花について調査した.その結果,定植時(種により播種6週間後から13週間後)において,いずれの花卉においても1.0%キトサン土壌混和処理は対照区(肥料,キトサンとも無施与)および無機肥料区に比べて有意に高い成長量を示した.また,1番花開花日については,トレニア,エキザカム,ベゴニア,グロキシニア,ロベリアおよびミムラスにおいて,1.0%キトサン土壌混和処理は他の処理区に比べ,1番花の開花が有意に促進されたことが認められたが,カルセオラリアおよびカンパニュラにおいては促進効果はみられなかった.これはキトサンによるエリシター効果,土壌中微生物相の変化あるいは有機物として直接植物に吸収利用されることによると推察される.
著者
矢羽田 第二郎 野方 仁
出版者
園藝學會
雑誌
園藝學會雜誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.72-77, 2001
参考文献数
14

イチジク'桝井ドーフィン'を用い, 結果枝内の第7節以下のすべての果実を横径が約4mmに達した結果期に摘果して, 第8節と第13節の果実の形質と糖集積に及ぼす影響を調査した.1. 第8節と第13節の果実が結果から成熟までに要した日数は73∿74日で, 摘果区と無処理区との間に差はなかった.結果後の果実肥大において, 第8節の果実では摘果処理の影響が小さかったが, 第13節では果径が肥大初期から大きくなる傾向が認められた.2. 無処理区の収穫果実は, 第8節と第13節の果実は第3節の果実に比べ横径と果実重が著しく小さく, 肥大が劣った.第8節, 第13節の果実は, 第3節に比べて果皮色のE値が高く着色が劣り, 小果, 果托の糖度も低かった.果実の硬度は, 節位間に差がみられなかった.3. 摘果区では, 第13節の収穫果実の横径と果実重が無処理区より大きくなり, 果肉内では小果よりも果托の重量が増加した.果皮色のE値は, 第8節では摘果区が無処理区より低くなって着色が優れ, 第13節でも摘果区が低下傾向となった.果実の硬度は, 第8節, 第13節の両節位とも処理区間に差がなかった.4. 摘果区では, 第8節, 第13節の小果および果托で無処理区に比べ単位重量当たりの果糖, ブドウ糖含量が増加した.また, 部位ごとの重量から換算した糖の総量も無処理区より多くなり, 特に, 重量増加が顕著であった第13節の果托で糖の集積が促進された.