著者
段 孝 内田 渡 平塚 秀明 大島 吉輝 宮田 敏男
出版者
一般社団法人 日本血栓止血学会
雑誌
日本血栓止血学会誌 (ISSN:09157441)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.487-494, 2018 (Released:2018-10-15)
参考文献数
36

要約:PAI-1 に直接作用する低分子阻害剤は,当初,血栓性疾患への適応に向けて研究開発が進められたが,PAI-1 阻害剤をツールとした研究等から,がんや糖尿病,肥満などのメタボリックシンドローム,さらには,多発性硬化症やアルツハイマー病などの神経疾患への適応の可能性が示唆されている.一方で,PAI-1 阻害剤の開発研究は世界的になされてきたが,現在までに,その臨床試験の報告は,PAI-749(diaplasinin,Wyeth Research 社)の第I相試験成績に留まり,理由は明らかではないが,PAI-749 は血栓症の動物モデルにおいては有効であったにもかかわらず,ヒトでは有効ではなかったと結論されている.本稿では,サルでのin vivo 薬効試験やヒト血漿を用いたin vitro 試験を行うことでPAI-1 阻害剤の臨床効果の予測が可能となることや,新たなメカニズムの解明によって,PAI-1 阻害剤のがんへの臨床応用の可能性が開けてきたことについて述べる.