著者
比嘉 吉志
出版者
国立大学法人 琉球大学島嶼地域科学研究所
雑誌
島嶼地域科学
巻号頁・発行日
vol.2, pp.19-39, 2021

琉球史における人口研究は,18世紀後半以降の総人口の減少と,一貫した町方人口の増加という特徴を挙げてきた。しかし,本稿はこれら先行研究のもとになった史料の数字を批判的に再検討するものである。具体的に,「琉球一件帳」や「中頭方取納座定手形」を取り上げ,従来の数字の解釈を批判的に検討し,総人口と地域人口の推移を整理した。 18世紀後半以降の琉球の人口推移は,総人口で増加傾向にあったが,町方人口は一貫して増加ではなかった。沖縄島で大きな人口増加が見られる一方,離島地域は人口の減少と停滞が顕著だった。このように,近世琉球の人口は多様な地域性をはらんで推移していったのである。