著者
比護 和子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 創立40周年日本調理科学会平成19年度大会
巻号頁・発行日
pp.130, 2007 (Released:2007-08-30)

【目的】 赤飯は,今日コンビニなどでおにぎりの形で一般的に販売され,日常食として利用されているが,元来,多くは祝い事のときに食されてきた。赤飯が祝い事に用いられてきた最大の理由は,古来赤い色は邪気を払い,魔除けの力があると信じられ,また赤い色は,凶を返して福とする,縁起直しの意味あいがあるからといわれている。赤飯を祝い事だけではなく,通夜や葬儀のとき,また忌明けのときにも使う地域がある。祝と弔,両面の使い方で,これは,赤飯の色,すなわち赤に意味があると考えられる。 そこで,赤飯は,実際にはどのように使われてきたかを,日本食生活全集の赤飯に関する事項,明治以前の赤飯に関する記事,赤い色に関する事項を整理し,赤飯のもつ意味と色について再考察する。【方法】 赤飯は,現在,どのような時に,どのように使われ,また食されているのか,食生活全集にある赤飯に関する事項を検索し整理した。また,明治以前の赤飯に関する文献・記事から,赤飯というものの扱い方,現代にまで続く通夜・葬儀での赤飯の使われ方,赤い色のもつ力を,遺された資料・遺跡などから再考察した。【結果】 赤飯を通夜・葬儀・忌明けなどに食し、近隣に配ることを現在も行っている地域がある。このことは、長寿の死者のみならず、年齢に関係なく行われている。この行為をみるかぎり、赤飯が、魔除け、凶を福に転ずる縁起直しという消極的な食べ物ではない。赤い色は避けがたい死を克服することができ、赤飯は、目に見えない力を新たに得ることでき、積極的な意味のある食べ物であると考えられる。