著者
棚橋 景子 水口 和代 柴田 妙子 牧野 薫 濱口 幸司 庄村 遊 澤田 康裕 水元 亨
出版者
一般社団法人 日本超音波検査学会
雑誌
超音波検査技術 (ISSN:18814506)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.395-399, 2016-08-01 (Released:2016-08-12)
参考文献数
7

症例は20歳代女性.胸部絞扼感と息苦しさを自覚し当院受診.心電図は洞調律,胸部X線は正常であったが,心不全症状を疑い経胸壁心エコー図検査施行となった.経胸壁心エコー図検査では軽度の左室拡大を認め,左房内に異常隔壁があり交通孔を認め三心房心と診断した.明らかな合併奇形は認めなかった.左房副腔・真腔間の血流は最大圧較差17 mmHg, 最大流速207 cm/sと圧較差を認めた.その後,心臓CTが行われ,左房内に異常隔壁を認めたが,心房中隔欠損・肺静脈還流異常・左上大静脈遺残などの合併奇形は認めなかった.心臓カテーテル検査では平均肺動脈楔入圧25 mmHg, 左室拡張末期圧10 mmHgと15 mmHgの圧較差を生じており,平均肺動脈圧30 mmHg, 右室収縮期圧40 mmHgであった.圧較差が10 mmHgを超えており,重症僧帽弁狭窄症に準じて手術を選択,左房隔壁切除術が施行された.術後の経胸壁心エコー図では左房拡大を認めたが,心機能は良好であり,左房内の圧較差は消失し肺高血圧も改善していた.三心房心の多くは幼少期に診断,治療となるために成人では遭遇する機会は少ない.しかし,左房内異常エコーを認めた場合には本症例も念頭に入れる必要があると考えられる.本症例では成人期に心不全症状にて初めて経胸壁心エコー図検査にて診断された貴重な症例であった.