著者
多田 早織 渡邉 恒夫 寺林 伸夫 伊藤 亜子 島村 美咲 篠田 貢一 野久 謙 古田 伸行 伊藤 弘康 清島 満
出版者
一般社団法人 日本超音波検査学会
雑誌
超音波検査技術 (ISSN:18814506)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.287-294, 2015 (Released:2015-06-17)
参考文献数
15

Purposes: The purposes of this study were to assess blood flow in the shoulders of patients with rotator cuff tears using the Doppler ultrasonography (US) and to evaluate the relationship between blood flow and tear size. Methods: From August 2010 to August 2013, 87 patients with rotator cuff tears (RCTs)and 20 healthy volunteers (controls) were enrolled in this study. The patients were divided into two groups depending on the presence or absence of night pain. The peak systolic velocity (PSV) and resistance index (RI) of the anterior humeral circumflex artery (AHCA) were evaluated using pulse Doppler US. The PSV and RI were compared between the aflected and unaflected sides in patients and between the dominant and nondominant sides in controls. Results: No significant difference in PSV and RI was noted between the dominant and nondominant sides in the controls. In the patients with RCTs, PSV of the AHCA in the affected side was significantly higher than that in the unaffected side (p 〈 0.001). PSV of the AHCA in the group with night pain was significantly higher than that in the group without night pain (p 〈 0.001). Moreover, the patients with night pain showed significantly lower RI on the affected side than on the unaffected side (p=0.012). Meanwhile, no significant relationships were observed between tear size and blood flow of the AHCA. The receiver operating characteristic curve of the PSV revealed that the area under the curve was 0.85 with an optimal cutoff value of 20.5 cm/s, yielding 83% sensitivity and 86% specificity. Conclusion: These results suggest that assessment of blood flow with Doppler US is useful for the diagnosis of RCT, especially in patients with night pain.
著者
木村 紀子 戸出 浩之 辻本 恵美 小林 さゆき 玉野 正也 望月 純二 二階堂 暁 幡 芳樹
出版者
一般社団法人 日本超音波検査学会
雑誌
超音波検査技術 (ISSN:18814506)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.32-38, 2020-02-01 (Released:2020-02-05)
参考文献数
16

症例は70代女性.胸痛にて救急搬送され,心臓CTで左冠動脈主幹部から左前下行枝にかけて高度狭窄と左室内に異常隔壁様構造物を認めた.心臓超音波検査にて隔壁は左室を2分するように基部から心尖部までの下壁中隔から下壁にかけて存在し,乳頭筋レベルで複数の切れ込みを有して心基部で大きく開口していた.さらに大動脈弁輪部左室流出路側には膜様構造物を観察し,ひも状構造物により僧帽弁前尖弁腹に繋がっていた.また多胞性膜様部心室中隔瘤を認めた.以上より僧帽弁副組織及び膜様部心室中隔瘤が併存する左室二腔症と診断した.急性冠症候群にて来院し,心臓CTおよび心臓超音波検査にて診断しえた貴重な症例と考え報告する.
著者
山口 夏美 西尾 進 門田 宗之 森田 沙瑛 湯浅 麻美 松本 力三 平田 有紀奈 山尾 雅美 楠瀬 賢也 山田 博胤 佐田 政隆
出版者
一般社団法人 日本超音波検査学会
雑誌
超音波検査技術 (ISSN:18814506)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.590-596, 2022-12-01 (Released:2022-11-22)
参考文献数
20

症例は,60代女性.幼少期に心雑音を指摘され,21歳時に当院で膜様部型心室中隔欠損症と診断されていたが,その後は医療機関を受診していなかった.今回,発熱および咳嗽を主訴に近医を受診し,血液検査で細菌感染が疑われ,抗生剤が処方された.心拡大とNT-proBNPが高値であったことから精査のため前医を紹介受診したところ,経胸壁心エコー図検査で肺動脈弁に長径30 mm程度の可動性を有する心筋と等輝度の異常構造物を認め,重症の肺動脈弁逆流を呈していた.感染性心内膜炎の診断で同日に前医に入院し,抗生剤が開始された.その後,外科的治療検討のため当院へ紹介となった.同日施行された経胸壁心エコー図検査では肺動脈弁に付着する巨大な疣腫と重症の肺動脈弁逆流を認めた.また,心室中隔膜様部に既知の心室中隔欠損を認めた.さらに右室内に異常筋束を認め,右室二腔症と診断された.前医の血液培養からStaphylococcus warneriが検出された.血行動態は安定しており,明らかな塞栓症は起こしていなかったため抗生剤による加療が優先された.その後,待機的に肺動脈弁置換術,心室中隔欠損閉鎖術,右室流出路心筋切除術が施行された.右心系の感染性心内膜炎の割合は感染性心内膜炎全体の5~10%程度とされており,左心系に比べ少ない.今回,先天性心疾患に合併した肺動脈弁位感染性心内膜炎の1例を経験したので報告する.
著者
中野 英貴 吉田 有紀 幡野 薫
出版者
一般社団法人 日本超音波検査学会
雑誌
超音波検査技術 (ISSN:18814506)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.725-728, 2004-10-01 (Released:2007-09-09)
参考文献数
12

Since the weight of the normal prostate is about 20 g in adult males, a prostate weighing estimated to weight more than 20 g by ultrasonography is regarded as prostate swelling in our hospital. However, the weight of the prostate varies with age, and its measurements also vary. In this study, we examined the changes in the weigh) of the prostate with age in the groups with and without symptoms in the prostate. In the healthy males without prostatic symptoms, the estimated weight of the prostate was more than 20 g in males over 50 years old, and there were many patients in whom prostate swelling was observed without significant clinical symptoms. It was considered necessary to be aware of the changes in the prostate weight with age without adhering to a single standard weight, when performing ultrasonographic estimation of the prostate weight.
著者
片岡 容子 種村 正 佐々木 伸子 由井 恵美 渡邊 伸吾 堤 由美子
出版者
一般社団法人 日本超音波検査学会
雑誌
超音波検査技術 (ISSN:18814506)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.370-377, 2019-06-01 (Released:2019-06-12)
参考文献数
5

目的:心エコーで算出する肺体血流比(Qp/Qs)に誤差が生じるのは,右室流出路形状が楕円形であることが原因の一つであると考えられる.本研究の目的はCTで右室流出路形状を解析すること,CTと心エコーで右室流出路断面積を比較し,その差が生じる原因について検討することである.対象と方法:心エコーとCTを同時期に施行した右室拡大がない67例(男性53例,女性14例,平均年齢58±26歳)を対象とした.CTで得られたMPR画像から,右室流出路の長径,短径,断面積を計測した.心エコーでは右室流出路長軸断面で計測した右室流出路径を直径とする面積を下位肋間断面積とし,探触子を1肋間上方に移動させて計測した面積を上位肋間断面積とした.CTから得られた値から右室流出路形状を解析し,各断面積を比較した.結果と考察:右室流出路形状は全症例が心臓の前後方向につぶれた横長の楕円形を呈していたことから,右室流出路形状そのものがQp/Qsの誤差要因の一つであることが明らかになった.CTの面積は6.6±1.8 cm2,心エコーで計測した下位肋間断面積は5.3±1.2 cm2(p<0.001),上位肋間断面積は6.5±1.2 cm2(ns)であったことから,右室流出路径は上位肋間で計測した方が良いと考えられた.結論:右室流出路形状が横長の症例においては,心エコーによる右室流出路径計測は上位肋間で行うとCTで計測した右室流出路断面積に近い値が得られる.右室流出路形状が楕円形であること自体が肺体血流比の誤差要因の一つであり,心エコーで計測している部位が症例によって一定ではないためにバラツキが生じるものと考えられた.
著者
中原 誠 都留 正人 上田 治 田路 明子
出版者
一般社団法人 日本超音波検査学会
雑誌
超音波検査技術 (ISSN:18814506)
巻号頁・発行日
vol.27, no.7, pp.477-482, 2002-12-01 (Released:2007-09-09)
参考文献数
28

PURPOSE : The purpose was consideration the measurement of pulmonary regurgitant flowvelocity by continuous-wave Doppler echocardiography. MATERIAL AND METHOD : The study population consisted of 51 patients that underwent the cardiac catheteri2ation within 10 days after the Doppler examination. In these patients, for 13 patients of right-sided pressure determination, we did linear regression analysis to differ. ence between pulmonary artery diastolic pressure and right ventricular end-diastolic pressure in the catheterization (PADP-RVEDP) versus the pulmonary artery-to-right ventricular pressure gradient at end-diastolic by continuous-wave Doppler echocardiography that were cornptrted in means of the simplified Bernoulli equation (4V2) from the pulmonary regurgitant flow velocity (PR-PG), and compared. For 46 patients of left-sided pressure determination, we did linear regression analysis to left ventricular end-diastolic pressure in the catheterization (LVEDP) versus PR-PG. Moreover, we were classified angina pectoris (group AP), acute myocardial infarction (group AMI). congestive heart failure (group CHF) in 51 patients. and we considered for significant difference at PR-PG of the groups.RESULT : PADP-RVEDP versus PR-PG had the correlation (y=0.96x+2.2, r=0.88, p<O.0001). LVEDPversus PR-PG had the correlation (y=0.73x-7.0, r=0.83, p<0.0001; x=1.37y+9.6). For difference of PR-PG at the each team, group AP were 3.4±1.0mmHg, group AMI were 6.4±2.5mmHg. and group CHF were 15.1±4.3mmHg, there were significant difference at al: groups. CONCLUSION : The pulmonary artery-to-right ventricular pressure gradient at end-diastolic was able to get noninvasively by continuous-wave Doppler echocardiography, because PADPRVEDP and PR-PG approximated to each other. It seemed that adding lOmmHg to PR-PG were valid at estimation of LVEDP. Normal PR-PG were understood 5mmllg or less, and CHF were high PR-PG. It was useful for diagnosis of CHF that pulmonary regurgitant flow velocity was measured by continuous-wave Doppler echocardiography.
著者
棚橋 景子 水口 和代 柴田 妙子 牧野 薫 濱口 幸司 庄村 遊 澤田 康裕 水元 亨
出版者
一般社団法人 日本超音波検査学会
雑誌
超音波検査技術 (ISSN:18814506)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.395-399, 2016-08-01 (Released:2016-08-12)
参考文献数
7

症例は20歳代女性.胸部絞扼感と息苦しさを自覚し当院受診.心電図は洞調律,胸部X線は正常であったが,心不全症状を疑い経胸壁心エコー図検査施行となった.経胸壁心エコー図検査では軽度の左室拡大を認め,左房内に異常隔壁があり交通孔を認め三心房心と診断した.明らかな合併奇形は認めなかった.左房副腔・真腔間の血流は最大圧較差17 mmHg, 最大流速207 cm/sと圧較差を認めた.その後,心臓CTが行われ,左房内に異常隔壁を認めたが,心房中隔欠損・肺静脈還流異常・左上大静脈遺残などの合併奇形は認めなかった.心臓カテーテル検査では平均肺動脈楔入圧25 mmHg, 左室拡張末期圧10 mmHgと15 mmHgの圧較差を生じており,平均肺動脈圧30 mmHg, 右室収縮期圧40 mmHgであった.圧較差が10 mmHgを超えており,重症僧帽弁狭窄症に準じて手術を選択,左房隔壁切除術が施行された.術後の経胸壁心エコー図では左房拡大を認めたが,心機能は良好であり,左房内の圧較差は消失し肺高血圧も改善していた.三心房心の多くは幼少期に診断,治療となるために成人では遭遇する機会は少ない.しかし,左房内異常エコーを認めた場合には本症例も念頭に入れる必要があると考えられる.本症例では成人期に心不全症状にて初めて経胸壁心エコー図検査にて診断された貴重な症例であった.
著者
松田 美津子 山寺 幸雄
出版者
一般社団法人 日本超音波検査学会
雑誌
超音波検査技術 (ISSN:18814506)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.271-277, 2017-06-01 (Released:2017-08-24)
参考文献数
8

Carotidynia(頸動脈痛)は頸動脈部分の圧痛を生じる原因不明の症候群である.今回超音波検査にてCarotidyniaによる頸動脈壁の肥厚と回復の経過を観察し得たので報告する.症例は43歳女性.右頸部痛を訴え3日目に当院を受診した.超音波検査にて疼痛部直下の右頸動脈球部から内頸動脈にかけて限局性の壁肥厚を認め壁厚は3.3 mmであった.肥厚部には動脈内腔から外膜方向に向かう細い拍動性の血流シグナルを認めた.経過観察において壁厚は11日目;2.4 mm,28日目;2.1 mm,6か月目;1.6 mmと縮小し,経過とともに肥厚部の血流シグナルも不明瞭化したことから,炎症に伴う一過性の腫大と血管拡張があったものと推測された.Carotidyniaを疑い疼痛部に限局性の壁肥厚がみられた場合は,偽腔血栓化を伴う頸動脈解離,早期の高安動脈炎やプラークとの鑑別が必要であり,2週間~1か月後に超音波検査を再検し,必要に応じて数か月の経過観察により肥厚部を評価する必要があった.Carotidyniaはしばしば誤診されたり見落とされたりすると報告されているが,頸部痛の超音波検査では,頸部リンパ節や甲状腺だけでなく頸動脈まで幅広く観察することによりCarotidyniaの診断率が向上するものと思われた.
著者
菊地 実 萩原 誠也 種田 紳二 中山 秀隆 市原 真 萬田 直紀
出版者
一般社団法人 日本超音波検査学会
雑誌
超音波検査技術 (ISSN:18814506)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.40-50, 2019

<p><b>目的</b>:糖尿病のインスリン療法に皮膚関連合併症があり,この合併症はインスリン吸収障害を起こすことがある.インスリン吸収障害の原因は,皮下投与されたインスリンの何らかの異常と考えられるが,この原因を超音波像によって視覚的に解明できるかを検討した.</p><p><b>対象および方法</b>:検体(ブタ組織),生体(成人ボライティア1名),インスリン皮膚関連合併症患者6名を対象に,検体ならびに生体で皮下注射が超音波像で可視されるかを実験し,インスリン皮膚関連合併症患者では,対象患者の患部と正常部にインスリンを投与し,両部位の超音波像の観察と血中インスリン濃度測定を行い,各投与部位の超音波像とインスリン吸収の関係を検討した.</p><p><b>結果と考察</b>:検体実験では投与液体は高エコーに描出され,その範囲は病理組織像と一致した.生体においても投与液体は検体同様に高エコーに描出された.高エコーとなった原因は,脂肪組織間の隙間に液体が滞留したことで超音波が反射,散乱したと示唆され,皮下注射は超音波像で可視できることが判明した.インスリン皮膚関連合併症患者のインスリン投与部位の超音波像は,正常部では実験同様に高エコーに描出されたが,患部では低エコーまたは混合エコーに描出された.患部の皮下投与インスリンの拡散面積は正常部に比べ有意に小さく(p<0.01),拡散部の輝度は正常部に比べ有意に低く(p<0.05),両者の皮下投与インスリンの超音波像は形態相違を認めた.インスリン吸収は患部では正常部に比べ有意に低く(p<0.05),拡散面積と正相関を認めた(p<0.05, r=0.9).したがって,患部の皮下投与インスリンは滞留範囲が制限された拡散障害の状態であることが示唆され,拡散障害とインスリン吸収低下の関連を超音波像で確認できた.</p><p><b>結語</b>:インスリン皮下注射は超音波像で観察可能であり,インスリン皮膚関連合併症の吸収障害の原因は,皮下投与されたインスリンの拡散障害であることが示唆された.</p>
著者
古島 早苗 尾長谷 喜久子 恒任 章 井手 愛子 木村 由美子 賀来 敬仁 前村 浩二 江石 清行 栁原 克紀
出版者
一般社団法人 日本超音波検査学会
雑誌
超音波検査技術 (ISSN:18814506)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.274-280, 2018-06-01 (Released:2018-07-11)
参考文献数
13

症例1:40代女性,4年前に他院にて二尖弁による大動脈弁狭窄症と診断され,大動脈弁置換術(CarboMedics 21 mm)が施行された.胸部違和感を自覚したため近医受診したところ,収縮期雑音を指摘され,精査目的に当院紹介となった.心エコー図所見:大動脈弁最大通過血流速度5.0 m/s,平均圧較差(MPG)58 mmHg,有効弁口面積(EOA)0.77 cm2,有効弁口面積係数(indexed EOA)0.45 cm2/m2,Doppler velocity index (DVI) 0.28,acceleration time (AT) 130 msec,弁周囲逆流(−),経胸壁・経食道エコーともに血栓弁やパンヌスを疑うような塊状エコー等は指摘できなかった.左室壁肥厚は認めず収縮良好であった.PT-INR: 2.22.X線透視所見:両弁葉ともに開放制限は認めなかった.症例2:60代女性,11年前に大動脈弁(ATS 18 mm)および僧帽弁(ATS 27 mm)置換術が施行され,経胸壁心エコー図にて経過観察を行っていた.心エコー図所見:大動脈弁最大通過血流速度3.6 m/s,MPG 36 mmHg, EOA 0.59 cm2, indexed EOA 0.42 cm2/m2, DVI 0.21, AT 122 msec,弁周囲逆流(−),経胸壁・経食道エコーともに血栓弁やパンヌスを疑うような塊状エコー等は指摘できなかった.全周性に軽度左室壁肥厚を認め,左室収縮は良好であった.PT-INR: 2.78.X線透視所見:両弁葉ともに開放の低下を認めた.両症例ともにドプラ所見から弁機能不全と診断し弁置換術が施行された.術中所見では両症例ともに弁下に輪状のパンヌス形成が認められた.まとめ:心エコー図では血栓弁やパンヌスを疑うような塊状エコーを描出できなかったが,ドプラ所見から大動脈弁位人工弁機能不全を診断し得た2症例を経験した.最大通過血流速度や平均圧較差,またAT, DVI等も考慮し,これらの指標の急激な変化や経年的な増悪があれば,人工弁機能不全を疑うことが重要であると考えられた.
著者
田中 和幸 寺島 茂 岩本 洋 黒石 正子 山内 格
出版者
一般社団法人 日本超音波検査学会
雑誌
超音波検査技術 (ISSN:18814506)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.52-59, 2015

今回我々は,妊娠中期での胎児超音波スクリーニング検査にてまれな先天性奇形の一つとされる単眼症を強く疑う1例を経験したので報告する.症例は22歳女性(妊娠17週5日),妊娠歴は1経妊1経産.超音波検査で体幹は週数相応で異常を認めないが,頭部は小さく,大脳の位置する前頭部頭蓋内部構造は非対称性でやや偏位しmid line echoおよび透明中隔の描出は困難であった.また顔面には二つの眼球が接して存在し,前額部に長鼻構造を認め単眼症が強く疑われた.流産児は,顔面中央一眼裂内に二つの眼球が接した接眼と前額部に長鼻構造を認め,耳介は両側頭部下部に認めた.胎児染色体検査では異常は認められなかった.<br>本症例は顔面所見より単眼症が強く疑われ,小頭症,頭蓋内構造異常も認められた.単眼症の多くは自然流産すると考えられ出生はまれとされる.また出生できても予後は非常に不良とされる.成因については染色体異常も報告されているが詳細は不明とされる.本症例でも明らかな成因はなく,偶発的に発生したものと思われる.<br>生存の可能性がない単眼症を妊娠早期に診断できれば,早期に母体の負担を軽減することも可能となることから,これを十分に考慮した胎児超音波スクリーニング検査が重要と考える.