著者
水田 宗子
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.41, no.11, pp.1-12, 1992-11-10 (Released:2017-08-01)

近代日本文学は、<公>の男傾域ではなく、女のいる私領域に生きようとする男を描いてきた。家庭に帰ってくる男と、家庭という世俗から色街へ出ていく男、共に、世俗を抜け出す道を、女のセクシュアリティに見出したいと願う。自我に荒れた内面を、女の肉体と母性によって癒されたいと願う男によって観念化された<女>と、その内面劇に要約される<男>に、女性作家は、性的他者として立ち向かうよりは、自らの内面を深層まで下降しようとし、独自な女性文学の世界を展開してきた。