著者
水谷 光良
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.58-62, 1982-02-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
6
被引用文献数
2 1

植生とライト・トラップとの位置関係から蛾の飛来の規則性を調査し,蛾類群集の研究のためのライト・トラップ最適設置場所について考察した。総個体数と総種数では林縁或いは林縁から約30mはなして設置したトラップで最も多く採集された。一方個々の種においては全体と同様に林縁付近に飛来のピークを持つものと,ピークを持たずほぼ一様に採集されるものの2つの飛来パターンが見られた。そしてこれらはそれぞれ木本食の種と草本食の種にほぼ対応していることが明らかになった。したがって全体での林縁付近のピークは森林からの飛来によって形成されているものと考えられる。また林内に設置したトラップでは個体数,種類数ともに極端に少なかったが,これはライト・トラップの光が林にさえぎられて狭い範囲にしか広がらない為と考えられる。そして林内のみで採集された種が皆無であった点を考え合わせると森林の蛾,或いは森林と草原両方の蛾を最も効率的に集めるためのライト・トラップの設置場所としては林縁付近30m以内が最適と考えられる。