著者
久留宮 康浩 水野 敬輔 世古口 英 菅原 元 河合 清貴 桐山 宗泰
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.80, no.4, pp.658-662, 2019 (Released:2019-10-31)
参考文献数
7

目的:名古屋刑務所に服役中で,刑務所より当院に紹介され外科治療を施行した症例について診療上の問題点を明らかにする.対象:症例は過去5年間の67例.平均年齢は56.6歳で,すべて男性であった.良性疾患32例,悪性疾患35例であった.全例,保険診療は行われず,支払能力はなくすべて刑務所負担であった.受刑者の入院加療の決定権は刑務所所長にあり,入院・手術・転院の決定は主治医と刑務所所長の間で決められた.方法:疾患,術前検査,手術,周術期合併症,術後経過について調べた.結果:術前検査においては検査値異常が多く,耐術能の低い患者が多かった.また,悪性疾患では進行度の進んだ症例が多く,ステージ3,4が54%であった.考察:被収容者の処遇に関する法律には受刑者も適切な医療を受ける権利があるとされるが,家族には治療はおろか疾患そのものについても知らされず,真に医療倫理が守られているとはいえなかった.