著者
水野 晃子 石坂 丞二
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-05-17

デジタルカメラデータのRGB表色系値を用いた、光合成生物と環境条件の調査方法は、この20年間で様々な研究がなされてきた。例えば、海域ではスマートフォンカメラを用いた水質の推定(Leeuw and Boss 2018)や、航空写真からの海草植生の検出とクロロフィルa濃度の推定(Goddijn and White 2006)などがあるが、海洋域だけでなく陸域などさまざまな地域で調査のために活用される背景には、デジタルカメラの携帯性と利便性、低価格であることがあげられる。また、観測可能性が天候によって左右されることがないため、衛星観測に対する補助的、追加的な調査としてデジタルカメラの有用性は大きいと言える。本研究では、伊勢三河湾において撮影されたデジタルカメラ写真のRGB表色系値を解析することによって、クロロフィルa濃度の推定方法の構築を試みた。伊勢三河湾ではSeaWiFSおよびMODISデータを用いたクロロフィルa濃度の推定方法がHayashiら(2015)によってなされているが、デジタルカメラデータによる方法は構築されていない。 我々は、伊勢三河湾の観測航海によってクロロフィルa濃度、海表面、18%グレー版および天空のデジタルカメラ撮影写真、連続スペクトル分光放射計(RAMSES/TriOS)による海表面輝度および天空照度のスペクトルデータを採集した。デジタルカメラ写真によるクロロフィルa推定の誤差は、海面反射、波長数の少なさ、データ圧縮やデジタル化による情報劣化など様々な要因によって生じると考えられる。本研究では海面反射について考察するため、分光放射計による海面輝度データは、海面反射の影響を最小に抑えることができるドーム法(Tanaka et al 2006)と、甲板上から撮影されたデジタルカメラデータと同条件で採集された甲板法の2種類を得、デジタルカメラデータのRGB表色系値と比較するためにCIE等色関数によってスペクトルデータをRGB値へと変換した(それぞれドーム法変換RGB値、甲板法変換RGB値とする)。デジタルカメラ写真のRGB値とは、甲板法変換RGB値の方が相関が高く、ドーム法とは関係性が低かった。また、甲板法変換RGB値によるクロロフィルa濃度推定の誤差が、デジタルカメラ写真によるクロロフィルa濃度推定の誤差量とほとんど同じ大きさであったため、デジタルカメラ写真によるクロロフィルa推定の主な誤差要因は海面反射の影響が大きいことが推察された。 L.M. Goddijn; M White, Using a digital camera for water quality measurements in Galway Bay, Estuarine, Coastal and Shelf Science (2006), 66, 429-436.M. Hayashi; J. Ishizaka; M. Toratani; T. Nakamura; Y. Nakashima; S. Yamada; Evaluation and Improvement of MODIS and SeaWIFS-derived Chlorophyll a Concentration in Ise-Mikawa Bay, Journal of The Remote Sensing Society of Japan (2015), 35, 245-259.T. Leeuw; E. Boss, The HydroColor App: Above Water Measurements of Remote Sensing Reflectance and Turbidity Using a Smartphone Camera, Sensors (2018), 18, 256-271.A. Tanaka; H. Sasaki; J. Ishizaka, Alternative measuring method for water-leaving radiance using a radiance sensor with a domed cover, Optics Express(2006), 14(8), 3099-3105