著者
石田 洋 古澤 一思 牧野 高志 石坂 丞二 渡邉 豊 Hiroshi Ishida Kazusi Furusawa Takashi Makino Joji Ishizaka Yutaka W. Watanabe 株式会社環境総合テクノス 株式会社日本海洋生物研究所 株式会社ケーズブレインズ 名古屋大学宇宙地球環境研究所 北海道大学大学院地球環境科学研究院 The General Environmental Technos Co. Ltd. Marine Biological Research Institute of Japan Co. Ltd. K's Brains Co. Ltd. Institute for Space-Earth Environmental Research (ISEE) Nagoya University Faculty of Environmental Earth Science Hokkaido University
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 = Umi no Kenkyu (Oceanography in Japan) (ISSN:21863105)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.17-41, 2016-03-15

西部北太平洋亜熱帯海域の定点(北緯22.5度,東経131.8度)で,2004年から2006年の各年の夏季に,調査地点の500km以内に台風が通過した後の10日以内におこなわれた植物プランクトン群集組成の調査結果を解析した。2006年の台風はEWINIARとBILISで,最接近時の移動速度がそれぞれ2.8と4ms^<-1>であり,2004年のKOMPUS(6.5ms^<-1>)と2005年のHAITANG(7.9ms^<-1>)に比べて遅かった。人工衛星による観測では,2006年のこれらの台風が通過した後,海表面水温が低下し,クロロフィルaが調査地点を含む広範囲において増加していた。また,植物プランクトンが増加しており,優占種はPlanktoniella solで,細胞数は4×10^<7> cells m^<-2>であり,2004年(1×10^5 cells m^<-2>)と2005年(5×10^4 cells m^<-2>)に比べて2-3桁高かった。さらに,シアノバクテリアおよびバクテリアの炭素態現存量も,2004年と2005年に比べ約2倍高かった。同じ地点で2002年12月から2005年7月まで実施したセジメントトラップによる沈降粒子観測では,台風の影響と考えられる変動はみられなかった。Phytoplankton communities and carbon biomass were investigated at 22.5°N, 131.8°E in the western North Pacific subtropical region between 2004 and 2006 within 10 days of a typhoon passing within 500km of the survey point. The typhoons of 2006 were EWINIAR and BILIS. The translation speeds of these typhoons at the nearest area from the survey point were 2.8 and 4 m s^<-1>, respectively slower than that of 2004's typhoon KOMPUS (6.5 m s^<-1>) and 2005's typhoon HITANG (7.9 m s^<-1>). After the 2006 typhoons, the sea surface water temperature decreased, and the chlorophyll-a increased over a wide area, including the investigation point. The number of diatoms in 2006 increased, and the carbon biomass was 5-10 times higher compared with 2004 and 2005. The dominant species of diatom was Planktoniella sol with 4×10^7 cells m^<-2> which was considerably higher than the cell density 2004 (1×10^5 cells m^<-2>) and 2005 (5×10^4 cells m^<-2>). 2006 carbon biomass of the cyanobacteria and bacteria was twice as high as that of other years. The settling particle flux after a specific typhoon was not increased, in contrast with the hypothesis we derived from the increasing biomass data.
著者
水野 晃子 石坂 丞二
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-05-17

デジタルカメラデータのRGB表色系値を用いた、光合成生物と環境条件の調査方法は、この20年間で様々な研究がなされてきた。例えば、海域ではスマートフォンカメラを用いた水質の推定(Leeuw and Boss 2018)や、航空写真からの海草植生の検出とクロロフィルa濃度の推定(Goddijn and White 2006)などがあるが、海洋域だけでなく陸域などさまざまな地域で調査のために活用される背景には、デジタルカメラの携帯性と利便性、低価格であることがあげられる。また、観測可能性が天候によって左右されることがないため、衛星観測に対する補助的、追加的な調査としてデジタルカメラの有用性は大きいと言える。本研究では、伊勢三河湾において撮影されたデジタルカメラ写真のRGB表色系値を解析することによって、クロロフィルa濃度の推定方法の構築を試みた。伊勢三河湾ではSeaWiFSおよびMODISデータを用いたクロロフィルa濃度の推定方法がHayashiら(2015)によってなされているが、デジタルカメラデータによる方法は構築されていない。 我々は、伊勢三河湾の観測航海によってクロロフィルa濃度、海表面、18%グレー版および天空のデジタルカメラ撮影写真、連続スペクトル分光放射計(RAMSES/TriOS)による海表面輝度および天空照度のスペクトルデータを採集した。デジタルカメラ写真によるクロロフィルa推定の誤差は、海面反射、波長数の少なさ、データ圧縮やデジタル化による情報劣化など様々な要因によって生じると考えられる。本研究では海面反射について考察するため、分光放射計による海面輝度データは、海面反射の影響を最小に抑えることができるドーム法(Tanaka et al 2006)と、甲板上から撮影されたデジタルカメラデータと同条件で採集された甲板法の2種類を得、デジタルカメラデータのRGB表色系値と比較するためにCIE等色関数によってスペクトルデータをRGB値へと変換した(それぞれドーム法変換RGB値、甲板法変換RGB値とする)。デジタルカメラ写真のRGB値とは、甲板法変換RGB値の方が相関が高く、ドーム法とは関係性が低かった。また、甲板法変換RGB値によるクロロフィルa濃度推定の誤差が、デジタルカメラ写真によるクロロフィルa濃度推定の誤差量とほとんど同じ大きさであったため、デジタルカメラ写真によるクロロフィルa推定の主な誤差要因は海面反射の影響が大きいことが推察された。 L.M. Goddijn; M White, Using a digital camera for water quality measurements in Galway Bay, Estuarine, Coastal and Shelf Science (2006), 66, 429-436.M. Hayashi; J. Ishizaka; M. Toratani; T. Nakamura; Y. Nakashima; S. Yamada; Evaluation and Improvement of MODIS and SeaWIFS-derived Chlorophyll a Concentration in Ise-Mikawa Bay, Journal of The Remote Sensing Society of Japan (2015), 35, 245-259.T. Leeuw; E. Boss, The HydroColor App: Above Water Measurements of Remote Sensing Reflectance and Turbidity Using a Smartphone Camera, Sensors (2018), 18, 256-271.A. Tanaka; H. Sasaki; J. Ishizaka, Alternative measuring method for water-leaving radiance using a radiance sensor with a domed cover, Optics Express(2006), 14(8), 3099-3105
著者
磯辺 篤彦 郭 新宇 中村 啓彦 広瀬 直毅 石坂 丞二 木田 新一郎 加古 真一郎 中村 知裕 万田 敦昌
出版者
九州大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2010-04-01

日本南岸における黒潮流路変動が、南岸低気圧の経路に揺らぎを与えることを発見した。冬季東シナ海における浅海部の海面冷却は、これに連動した海面気圧と風系の変化を通して、負のフィードバック機構を持つことを示した。瀬戸内海での海面水温分布によって海陸風が変調すること、大潮・小潮周期の海面水温変化に応じて、海上風も変動することを発見した。以上、縁辺海や沿岸規模の海洋過程は大気過程に影響を与え、場合によって相互作用が成立することを示した。また、植物プランクトンの春季ブルームが海面水温を変化させ、これが低気圧の発達に影響を及ぼすといった、大気ー海洋ー生態系の結合過程を提案した。