著者
藤田 雅也 後藤 浩太朗 水野 真盛 土田 明子 森 昌子
出版者
公益財団法人野口研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、ピロリ菌の増殖抑制効果を持つαGlcNAc(αグリコシル型でN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)が結合しているもの)含有ムチンを、糖結合モジュール(CBM)により、天然から効率的に得る方法を検討する。具体的には、遺伝子情報を基に、αGlcNAc含有ムチンの糖蛋白質糖鎖に結合すると考えられるリコンビナントCBMを作成・固定化する。該CBMを用いて、天然の粗抽出物からαGlcNAc含有ムチンを分離精製し、その抗ピロリ菌活性を検討する。これにより、抗ピロリ菌活性の高いムチンが得られれば、機能性食品添加物として、もしくは抗菌物質の補助剤としての役割が期待できる。今回の検討により、1、当該CBMは、ウェルシュ菌だけでなく、ビフィズス菌その他の常在菌にも存在する可能性が高く、その遺伝子を取得後、蛋白質発現用ベクターを構築し、一部はその発現が確認できた。また、2、CBMのαGlcNAc含有ムチン特異的に結合すると考えられる領域の分泌発現を検討し、ブレビバシラス菌を宿主とする発現方法により、効率よく分泌発現されることが示された。これにより、CBMの工業的な利用可能性が示された。一方、3、αGlcNAc含有ムチンを天然から効率的に抽出できない場合を考え、CBMを活用した酵素的合成法によってもαGlcNAc含有ムチンが調製できないかを同時に検討した。その結果、ウェルシュ菌の当該CBM領域を導入したバクテロイデス菌由来のリンコンビナント酵素(αGlcNAcの加水分解酵素(Agn)とのキメラ型酵素)が、合成基質(GlcNAc-DMT)に作用し、αGlcNAc非含有ムチンをαGlcNAc含有ムチンへと変換することがわかった。これにより、工業的な応用可能性も高まった。さらに、効率的な糖鎖導入等を考え、他の菌体由来のAgn調製のための遺伝子も取得することができた。