著者
永井 保男
出版者
中央大学経済研究所
雑誌
中央大学経済研究所年報 (ISSN:02859718)
巻号頁・発行日
no.45, pp.653-687, 2014

わが国では,戦後の経済成長に伴い人口の大都市圏への集中がおこった。とくに1940年代の後半以降,若者を中心とした都市圏への大量の人口移動はその後,地方における人口減少と高齢化が大きな社会問題として取り上げられることとなった。現在の国土交通省では,1962年に始まった全国総合開発計画(全総)における「都市の過大化の防止と地域格差の是正」計画以降,「地方定住構想」が国土開発の重要テーマのひとつにかかげられた。各地方自治体でも人の移住受け入れに対する取り組みが行われてきているが,地価の低下や職住接近志向などにより,都心近郊から都心部への人口回帰現象などに動きがみられるものの,排出先であった地方圏にいたる大規模な人の移住現象はみられていない。本稿では,国による国土開発計画と人口政策にかかわる人の移動,定住促進に対する取り組みの変遷を振り返るとともに,地方自治体における定住促進事業の現状について,その内容と実績を分析することとした。